プライドでも好みでもない、戦略で選んだ『最速で売れるため』のブランディング。iLe.+ 北原翔さん

プライドがなかったからこそ、抵抗もなかった

 

 

─では、iLe.にはアシスタントとして入社されたんですか?

 

そうですね。スタイリストになってまだ日も浅かったですし、売上もなかったし。自分がスタイリストであることにそこまでプライドがなかったので、アシスタントとして働くこと自体はすぐに受け入れられました。独学で学んでいたとはいえ、iLe.のスタッフに比べればブリーチ技術は素人みたいなものでしたし、それを一から学べるのもすごく魅力的だったんですよね。

1年ほどアシスタントとして働いた後、代表の西村(涼さん)に直談判してスタイリストデビューさせてもらいました。

 

 

─デビュー後の集客は順調でしたか?

 

SNSも使っていましたが、集客サイトをフル活用することで客数を伸ばしていきました。当時、僕以外のスタイリストは自己集客ができていて、集客サイトは予約管理のツール程度にしか使っていなかったんです。それをみて、チャンスだなと思って。1社目も、iLe.の前に籍を置かせてもらったサロンも、集客サイトを活用するお店だったので、なんとなくノウハウがわかっていたんですよ。

自分専用の限定クーポンを作ったり、スタイルを1日に何度もアップしたり、口コミを集めたり。地道な作業ですけど、効果があることはわかっていたので、やれることをやろうと思っていました。実際、集客サイトから新規のお客さまが指名で来てくださることが増え、そのお客さまを撮影させてもらうことでSNSも伸び、いいサイクルが作れるようになりました。

 

SNSの打ち出しは、好みではなく戦略的に

 

 

iLe.に入社して変わったことといえば、SNSへの取り組み方だと思います。先輩たちが毎日投稿しているので触発されて、自分も力を入れるようになりました。西村が参考に見せてくれたリールの作り方を実際に試してみたりとコツコツ続けていたら、1カ月ほどで投稿が伸びるようになったんですよね。

入社当初は1000人ほどだったフォロワーがアシスタントのうちに3500人まで伸びて、閲覧数が良かった投稿をベースに発信内容を固めたら、その後も着々と増え1カ月で8000人台に。1日1000人ペースで増えることもありました。

 

─発信していたのは、当時からハイトーンやバレイヤージュのスタイルですか?

 

そうですね。うちはハイトーンとバレイヤージュが売りのサロンですが、当時はまだ、バレイヤージュをやっているスタッフが少なかったんですよ。差別化できるのはバレイヤージュかなと思って打ち出しを決めました。それと、1社目がファミリーサロンだった名残りか、自分の顧客はママさんが多いんです。客層を考えたら、ハイトーンよりもバレイヤージュの方がマッチするかなという狙いもありました。「外国人風カラーが好きだった」というより、最短で売上を出すために戦略的に決めたブランディングです。

 

 

デザイン自体も、自分より上手い人がたくさんいる中でどうしたら選ばれるか?を第一に考えました。バレイヤージュはブラウン×ブロンドや、シルバー×グレーのデザインを作る人が多いので、あえてペールトーンのデザインを載せたり、スライスの取り方をアンブレラカラーっぽい形ではなく、中国の方がやっていた毛を落として作る形にしてみたり。とにかく差別化と技術向上を意識して、周りから一歩前に出るために発信内容を選んできたつもりです。実際、積極的に発信していた頃はフォロワー数も閲覧数も右肩上がりで、数年で4万人超えにまでアカウントを育てられたので、方向性は間違っていなかったのかなと思います。

 

─ハイトーンやバレイヤージュは、いわゆる“海外バズ”が起こりやすいとも言われていますよね。それについてはどう捉えていましたか?

 

僕の投稿も、海外の方の中でバズることはよくありましたが、それはそれでいいかなと思っていました。もちろん、日本の中だけで伸びた方が直近の集客には繋がりやすいです。でも僕の場合、海外の方がたくさん投稿を見てくれたことで、海外からもセミナーを依頼されたり、新しい仕事にも繋がっていました。『見られている』という事実さえあれば、あまり気にしなくていいかなと思っていましたね。

 

 

─現在はiLe.+の店長をつとめ、海外セミナーでも活躍し、コンテストにも出場。当初、意欲がなかったとは思えないご活躍ですが、現在はどんな思いで仕事に向き合っていますか?

 

正直、今でも「美容師が大好きで、楽しくて仕方ない」という感覚はありません。最近は、それが自分のいいところなのかもしれないと思っています。いい意味で“仕事”だと割り切っているので、一喜一憂しすぎず、淡々と目の前のことに向き合えるんですよね。

 

とはいえ、ここまで続けて来られたのは楽しいと思う瞬間があるからなのも間違いありません。僕にとって、美容師の楽しさとは『できなかったことができるようになること』なんですよ。

 

 

美容師って、やることがたくさんありますよね。撮影、セミナー、サロンワーク、コンテスト、業界誌…その中にもさまざまな技術や学びが必要で、常に目の前に課題がある。それが楽しいんです。できることをただ続けるだけでは面白くないと感じる僕にとって、課題だらけで立ち止まる暇のないこの仕事は、ある意味ぴったりなのかもしれません。

いつか、本当の意味で自分がのめり込めるものが見つかるように、これからも目の前のことに自分なりに向き合っていきたいと思っています。

 

プロフィール
iLe.+
北原翔

長野県出身。日本美容専門学校卒業後、埼玉のサロンに入社。その後、フリーランス期間を経てアシスタントとしてiLe.に入社。1年でスタイリストデビューを果たし、ハイトーンカラーやペールトーンのバレイヤージュを打ち出し、4万人のフォロワーを獲得。中国、韓国、インドネシアなど海外の美容師からもセミナー依頼を受ける人気美容師に。

Instagram:@sho_kitahara

(文/岩木日向子 撮影/菊池麻美)

 

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