プライドでも好みでもない、戦略で選んだ『最速で売れるため』のブランディング。iLe.+ 北原翔さん

今回登場するのは、原宿のiLe.+(イルプラス)で店長を務める、北原翔(きたはらしょう)さん。ペールトーンのバレイヤージュや、均一なハイトーンカラーで国内外から支持を集める北原さんは、今では韓国・中国・インドネシアなどアジア各国からセミナー依頼が舞い込むほどの実力者。しかしそんな彼にも「美容師になるか迷っていた」時期があったというから意外です。
現在のブランディングに至るまでの戦略や、海外バズとの向き合い方、北原さんが考える“美容師という仕事の楽しさ”まで、詳しくお話を伺いました。
「美容師になりたい」と思えなかった

─美容師を志したタイミングは?
志したと言えるほど大きなきっかけはなかったかもしれません。キラキラしてるし、なんとなく楽しそうだな、くらいの気持ちで専門学校に進学しました。
表面的な部分だけを見て美容業界に足を踏み入れたので、学生時代に早速、現実にぶつかったんですよ。座学も多いし、想像以上に地味で大変なことばかり。正直心が折れてしまって、かなり出来の悪い美容学生でした(苦笑)。
そんな調子だったので、青山や表参道などの中心地での就職なんて考えもせず、美容師になるかどうかすら迷っているような状態で卒業が近づいてきて…。学校の紹介で、提携しているグループサロンになんとか入社が決まりました。特に希望も持たずに入社したサロンでしたが、僕にとって、最初のターニングポイントは1社目に入ったことだったと思います。

─そこで、美容師の仕事を楽しく思えるように?
楽しくなったというよりは、覚悟が決まったという方が近いです。1社目は大きい会社だったので、新人研修が徹底していたんですよ。めちゃくちゃ怖い講師の方が来て、接客や勤務態度、マナーについて厳しい指導を受けました。当時、やる気がなかった僕はしっかり目をつけられ、来る日も来る日も叱られて。正直、あまりに怒られるのでこのまま辞めてしまおうかと思った日もありました。
でも、逃げたと思われるのは悔しかったし、講師の方の言っていることはもっともで、少しずつ「仕事としてお金を受け取って働かせてもらってるんだから、ちゃんとやらないとな」と思うようになったんです。

学生気分が抜けていなかった自分の考え方を改めることができて、練習にも真面目に取り組むようになりました。お金がないからやることもなかったですし、朝も夜も練習して、時にはお店に泊まることもあったくらい。一度スイッチが入ってからは、目の前の課題に黙々と取り組んでいましたね。レッスンも順調に進み、入社から2年弱でスタイリストデビューを果たしました。
自己集客0でフリーランスになった、地獄の日々

当時から、ブリーチやハイトーンカラーについて学びたいという意欲がありました。でもそれは、ハイトーンカラーが好きだったからというよりは、できない技術がある状態が不安だったから。お店でブリーチに力を入れている人はほとんどおらず、カリキュラムにも基礎的な内容しか入っていなかったので、オンラインサロンやセミナーで独学で学んだりしていました。そうするうちに、技術へのこだわりが出てきたんです。
クオリティを上げるためにじっくり時間をかけて施術したいと思うようになったし、薬剤もいいものを使いたかった。ただ、そのとき働いていたのは幅広い世代がくるファミリーサロン。決められた時間内で、決められた施術をすることが良しとされていたんですよ。

今になって振り返れば、サロンには客層やブランディングに合わせた特色があると理解できます。ただ、当時の僕は子供で、仕上がりのクオリティよりも時間配分のことを注意されることに納得がいかず、辞めたいと考えるようになってしまったんです。
退職の意思を伝えた僕の話を、わざわざ聞きにきてくれた社長に対しても、生意気なことを言ってしまって。半ばクビのような形でフリーランスとして働くことになりました。
─フリーランスの場合、自己集客が必要になりますよね。
そこが一番苦労しました。というのも、1社目はお店が集客に力を入れてくれていて、自己集客は必要なかったんですよ。指名売上は30万円もないくらいで、SNSもほとんどやっておらず、新規集客も見込めない。自業自得ながら、フリーランス時代はお金がなさすぎて本当に地獄のような日々でした(苦笑)。

その後、SNSを通して見つけた都内のサロンになんとか入社することができました。新規顧客に恵まれたお店だったので忙しくて楽しかったですし、しばらくそこで働こうと思ってたんです。でもそのタイミングで、iLe.のスタイリストから「うちでアシスタントをやらないか」と声をかけられたんですよ。
─もともとお知り合いだったんですか?
一度セミナーに行ったことがあって、当時はアシスタントだったので「アシスタントを募集するときは声をかけてください」と言ったんですよね。ただ、その話をしたのは1年以上前だったので、そこから僕はスタイリストデビュー、退社、フリーランス…とずいぶん状況が変わっていて。お断りするつもりで話だけ聞きに行ったはずが、断りきれずになぜか入社することになっていました。
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