なぜ落合健二は“ハイトーン時代”を先読みできたのか? 原宿で育てた「薬剤のものさし」とデザイン哲学

 

“ハイトーン専門店”ではなく、“デザインで記憶に残る店”を

 

――13年間勤めた環境を経て、IENAのオープンへ。コロナ禍での挑戦となりましたね。


独立自体は、実はずっと考えていました。途中でフリーランスに転向したのも、独立準備の意味合いが大きかったです。物件探しに時間を使いたかったし、「どういう形が現実的なんだろう」と考える時間も必要だった。

 

ただ出店しようとした矢先にコロナになったので、タイミングとしてはかなり大変でしたね。物件も決まらない。先も見えない。世の中全体が止まっていた。でも逆に、「だったら今しかない」と思った部分もありました。未来が見えないからこそ、自分で未来を作るしかないって。そうして2021年、原宿にIENAをオープンしました。





 

――IENAはどんなサロンにしたいと思って始めたんですか?


単純に、有名になりたいという気持ちはありました(笑)。でも、それだけじゃなくて、「IENAって言ったら分かるよね」っていう存在にしたかったんです。

 

美容業界って、技術だけでは残れないじゃないですか。結局、お客さまの中に“印象”として残れるかどうかがすごく大事だと思っていて。だから、ただハイトーンが得意な店を作りたかったわけではないんです。デザインで感動を作れる場所。お客さまが帰る時に、「なんか今日、気分が上がる」「少し前向きになれた」と思える場所を作りたいと思いました。

 

IENAには、「designを作り、感動を作り、未来を作る」という理念があります。これは言葉だけじゃなくて、サロン運営そのものの考え方でもあるんです。髪型って、その人の自己肯定感にすごく影響する。鏡を見た時、少し自信が持てたり、人に会いたくなったり、写真を撮りたくなったり。その小さな変化が、その人の人生に影響することもある。美容師って、実はすごく“人の人生に近い仕事”だと思うんです。





 

「ハイトーン技術」は、一度失敗しないと分からない

 

――講師活動も積極的に取り組まれているそうですが、教育で大切にしていることはありますか?


実践ですね。結局、やらないと分からない。セミナーでも、営業中の教育でも、最初からモデルに入ってもらうことを大事にしています。もちろん基礎は教えます。薬剤知識も、ブリーチの塗布も、チェックもする。でも、本当に身につくのって“本物の経験”なんですよ。

 

ハイトーンって難しいんです。失敗すると大きい。切れることもあるし、ムラにもなる。やり直しがきかない技術でもある。でも、だからこそ、自分の中で「ここまではいける」「ここを超えると危ない」っていう感覚を作らないといけない。

 

極端なことを言えば、一回失敗しないと分からない部分ってあるんですよ。もちろん無責任な意味ではなくて、その経験を積む前にスタイリストとして独り立ちしてからの失敗は、逆にもっと危ない。だったら、挑戦できる環境で経験を積んで、自信をつけた方がいい。だからデビュー前のスタッフには、営業中でも空いてる時間にモデルを呼んで練習してもらっています。

 

アシスタント時代にはSNSでモデルを呼び込んで、とにかく数を経験する。半日でも現場に立つと、成長速度って全然違うんですよ。技術だけじゃなくて、接客も身につく。美容師って、“人”を相手にする仕事なので、そこも含めて経験だと思っています。


 

 

>「感覚」と「計算」の間に、デザインカラーがある

 

 

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