今の時代、クリエイティブは美容師に必要か? DADA CuBiC古城隆・SCREEN神谷翼・LECO内田聡一郎が語る、コンテストへの本音-soucutsの庭Vol.4-
クリエイティブの捉え方

内田:実際に、コンテストを全くやらないサロンになってもいいの? 違うことで、クリエイティブを見出せるのであれば。翼くん的には、それでいいと思ってる?
神谷:すごい質問ですね(笑)。うーん…。もしそれが、その子にとって本当に必要なことで、やりたいことでもあって、そこにちゃんと意味があるのであれば、それはそれでいいのかなとは思います。そこで何かが動いていたり、ちゃんと成長しているのであれば。
だからコンテストだけがクリエイティブっていう感覚でもなくて。何か、人に対して、一生懸命何かを表現していくこと、それが美容を通じてであれば、全部クリエイティブなんじゃないかなっていう感覚が強いですね。ただ、今の質問を言われたら、ちょっと寂しくなっちゃいましたね(笑)。みんながコンテストに出ないとかってなると…。
古城:葛藤がありますよね。いろんな問題がつながっていくから。
神谷:コンテストとサロンワークは直結するか…みたいな質問もよくありますよね。サロンワークがどうとか、美容師としてどう、というよりも、「生き様」みたいなとこあるじゃないですか。人としての在り方というか。そっちで捉えるほうが、しっくりくる気がしていますね。
実際に見ていても、サロンワークでしっかり結果を出しているスタッフって、コンテストでもものすごく努力して、ちゃんと結果を出していることが多いんですよ。だから生き様かなって感じがします。
内田:コンテストとサロンワークとの関連性について、DADA CuBiCとしてはどう?

古城:うちでも最近、コンテストに興味を持って出始めた子がいて。まだ結果は出てないんですけどね。ただ、こちらから細かくアドバイスすることは、あまりしないようにしています。僕のデザインを作ってほしいわけじゃなくて、自分のデザインを作ってほしいので。
今、神谷くんが言っていたこととも近いんですけど、クリエイションって“表現すること”じゃないですか。つまり、自分自身と向き合うことだと思うんです。
その自分としっかり向き合えないまま、サロンワークという、人に対して本気で向き合う仕事ができるかというと、なかなか難しいんじゃないかなと感じていて。
そういう意味での繋がりでいうと、クリエイションって、とにかく時間をつくって、命削るくらいの気持ちでやり込んで、自分と向き合うものなんですよね。正直、結構苦しいです。自分も経験してきたので。でも、そのプロセスを経ることで、自分のキャパをどんどん超えていけるし、人との向き合い方も変わってくる。まずそこが一つあると思っています。
もう一つは、ヘアデザインにかける「エネルギー」。デザイン性が高くなればなるほど、ほんの少しの厚みや長さにも敏感になってくるし、それが気持ちいいかどうかがすごく気になってくるんですよね。そういう目線や審美眼を持ってサロンワークをするのと、いつもの範囲でやるのとでは、やっぱりデザインにかけるエネルギーが全然違うと思っていて。
僕たちはお客さまの時間をいただいて、その中でどこまでクオリティを高められるかがプロの仕事だと思うんです。おそらく僕のところに来てくださるお客さまは、そこに価値を感じてくださっているのかなと。「ちゃんと真剣に向き合ってくれる」というところに。
「サロンワークって楽しいですか?」っていう質問も、これまたよくあるんですけど、なんとなく楽しいって言わなきゃいけない空気ってある気がしていて。
でも僕にとっては、“楽しい”というよりも“真剣”なんですよね。1日1日、一人ひとりに対して、どれだけ本気で向き合えるか。それって、自分を表現するという意味でもそうだし、人にデザインするという意味でもそう。「自分のクオリティに負けたくない」っていう感覚というか。
そういう力も、クリエイションを通して培われていくものだと思っていて。技術だけじゃなくて、美容師としての人間力みたいな部分も、確実に変わっていくんじゃないかなと思いますね。
クリエイティブとサロンワークの関連性

内田:そう考えると、優勝する人に共通点みたいなものってあるのかなとも思うんですよね。サロンワークとちゃんとリンクしている人が、結果を出しているのかどうか。
例えば、クリエイティブを突き詰めて大会で優勝した人って、その場においては最も評価が高いわけじゃないですか。でも、その技術や感覚が、そのままサロンワークに落とし込めているかどうかって、正直わからない部分もあると思うんですよね。
その真偽が見えないままコンテストが続いていることに、どこか違和感を感じる人もいるのかなと。
例えば今回の三都杯でいうと、もともとサロンワークとコンテスト、両方をプロフェッショナルとして成立させていこう、という考え方から始まっている大会じゃないですか。
決勝でも、一つのデザインだけじゃなくて3つ見せる形式だったり、予選でもサロンワークの要素があったりと、いろんな側面をちゃんと拾いにいく設計になっている。
だからこそ、優勝した人には、そのままサロンワーカーとしてもスターになってほしいという期待があると思うんですよね。
よく「コンテストに出ることや撮影をすることは、サロンワークにも必ずいい影響がある」って言われるじゃないですか。
ただ、それがどうしても“机上の空論”に聞こえてしまっている若い世代がいるのも、ひとつの課題なんじゃないかなと思っていて。
逆に、懸念していることもあって。クリエイティブを突き詰めていけばいくほど、お客さんがリアルに求めているものと乖離してしまうのではないだろうかと。もちろん技術的にはすごく精度が高くなるんだけど、でもお客さんって、意外とそこまで求めていないこともあるというか。むしろ、違うところに価値を感じていたりするじゃないですか。そこに対して、こちら側の解像度だけがどんどん上がっていくと、逆にピントがズレてしまうというか。そういうリスクも、クリエイティブにはあるなと感じることがあって。

だからこそ、今後のコンテストって、ただ技術の精度を上げるだけじゃなくて、その“ズレ”をどう埋めていくか、みたいなところもテーマになっていくのかなと。最近のコンテストって、まさにそこに焦点が当たり始めている気もしていて。
例えば、ミリ単位で作り込まれたカットとか、すごく精巧なカラーって、いいんだけど、もっと雑多な方がかわいいのにって時も、意外とサロンワークではあるじゃないですか。実際、俺はそこまでいいと思わないヘアデザインを、お客さんがすごく気に入っていたり、アシスタントが「いいですね」って言ったりすることもある。それってなんでなんだろうって考えると、いわゆる黄金比とか、セオリーとしてのいいバランスって、自分たちの感覚だけじゃなくて、時代性とか世代ごとの価値観によって、流動的だからだと思うんですよね。難しいなって感じる。だからこそ、場合によっては、クリエイティブに取り組むこと自体が、逆に足枷になってしまう可能性もあるんじゃないか、って思うこともあるんですよね。

古城:今、どのコンテストも若い世代の出場者を増やそうとしていますよね。それ自体は本当に素晴らしいことだと思います。
その上で、美容師を続けてきて今感じるのは、「いろんなことに気づけるセンス」がある人が、やっぱり成長していくんじゃないかということなんです。
例えば、ウィッグを100体切ったとしても、それが単なる自己満足で終わってしまったら、もしかしたらあまり成長には繋がっていないかもしれないですよね。
自分にとってクリエイションって、たしかに自分の“好き”を爆発させる場ではあるんですけど、決してエゴではないと思っていて。なぜかというと、僕らはモデルがいないとデザインが成立しないからなんです。
モデルのことを考えながら、その上で、自分の中にあるものを表現していく。僕にとってクリエイションは、自分の中にある想いや考えを伝える“メッセージ”なんですよね。
最大の自己表現ではあるけれど、同時に、見てくれる人に対してのメッセージでもある。
だからこそ、若いうちからどんどんトライするのはすごく大事だと思うんですけど、それが先走ってエゴになってしまうと、ちょっと違う方向にいってしまう。
そのバランスに気づけるかどうか。そのセンスを持っている人が、結果的にサロンワークでも同じように成果を出しているんじゃないかなと思います。
内田:コンテストでも、バッサリ切ることが正義みたいな流れがあったじゃないですか。それって本当に、バッサリ切ったら偉いんだっけ? って、疑問にも感じる。もちろん、ビフォーとアフターを変えなければいけないってことは、カットするしかないんだけど。そもそも、そこが一番大事なことなのかどうかっていうのは、主催する側とか、審査する側が、もうちょっと本質的に考え直さなきゃいけないと思うよね。

神谷:おそらくそれを前提にしているコンテストもありますよね。長さをしっかり切ること自体がポイントになるような。でもそれって、デザインのクオリティというより、「そういうモデルさんを見つけられたかどうか」の勝負になってしまう部分もあると思っていて。そこにはちょっと違和感があって。「そこまで切らなくても、ここまで変えられるよね」っていう部分を、ちゃんと評価していく必要があるんじゃないかなと感じています。
内田:よく2人も言ってると思うんだけど、カットって最終的には「どこを残すか」っていう話でもあるじゃないですか。
そう考えると、ロングからベリーショートにすることが本当に正義なのか、っていう疑問もあるし、そもそもそこが評価軸に入っているべきなのかどうかも、難しいところですよね。…まあ、これ言い出すと迷っちゃうと思うんだけど(笑)。
古城:そうですね。リアルなサロンワークでいうと、毎回イメージチェンジを提案することが、必ずしも正解ではないですし。むしろ「いつもの感じがいい」という、その安定感の中でのクオリティを求めるお客さまもいらっしゃるので。そういう気持ちをどれだけ察知できるかというのも、僕らの仕事の一つだと思います。

内田:その“察知力”みたいなものも、ある意味クリエイティブだよね。それをどう評価していくかっていうのは、すごく難しい。結局、今その場にあるもので評価するしかない、っていう現実もあるし。本質とは少しズレてしまう部分も、どうしても出てくるのかなって。
で、その違和感に、若い子たちはなんとなく気づいている気もするんですよね。
逆に先輩は、長年そこでやってきちゃったもんだから、現状を正義と見立てないと、自分達の価値がなくなってしまうんじゃないかと危惧してるのかもしれない。そのある種の形が、JHAとかだったりする…?
神谷:際どい(笑)。サロンワークとコンテストが直結するかどうかの質問は結構多いですよね。で、自分がどうだったかなと考えたら、直結させようなんて思ってなかった気がします。サロンワークでは売上も高い、その上で、ステージにも上がれる。二刀流じゃないけど、美容師という枠で、かっこいいと思える顔を増やしたい、という気持ちだったので。実際、今もそういう思いでやってるし。
内田:俺もね正直、サロンワークとクリエイティブは、ある種、繋げないほうが正しいんじゃないかと思うことは結構あるし、それを言うべきなんじゃないかって思う時もある。
神谷:無理矢理つなげようとすることではないじゃないですか。でも、そういう質問多いじゃないですか。だから僕も、いつもモヤモヤしちゃうんですよね。それって違う!って。