今の時代、クリエイティブは美容師に必要か? DADA CuBiC古城隆・SCREEN神谷翼・LECO内田聡一郎が語る、コンテストへの本音-soucutsの庭Vol.4-
コンテストは本当に必要か?

内田:じゃあ、そもそもの話として。「なんでコンテストってやらなきゃいけないのか」とか、「なんで出る必要があるのか」っていう問いに、どう答えるべきなんだろうって思うんですよね。それって、メーカーさんやディーラーさんが、なぜコンテストをやり続けているのか、という話にも繋がってくると思うし。
極論ですよ。この美容業界から、コンテストがなくなってもいいのか。それでいったらどう?
神谷:えー…。ダメだと思います。ダメという言い方も違うかもしれないですけど。そもそも僕がクリエイティブをやっている一番の理由って、始まりもそうだし、美容師を目指したきっかけでもあるんですけど、ヘアショーなんですよね。
高校生のときに、父のヘアショーを見たのがきっかけで、「こういう世界があるんだ」って憧れて、美容師になろうと思ったんです。クリエイティブ側からのスタートだったんですよね。
僕は、美容師になった当初、PEEK -A -BOOに在籍していて。そこは人数もたくさんいて、大先輩方がたくさんいるような組織。そんな中で、20代前半の僕が、どうやってステージを目指せるのかといえば、コンテストっていう場所しかなかったんですよ。
僕と同じような環境の子たちの可能性の幅を、狭めることになると思うんですよね。コンテストがなくなるってことは。だから僕は、なくなってほしくないと思います。

古城:こうやってコンテストという形で競い合ったり、自分の力を試せる場がある業界って、実はあまり多くないと思うんですよね。美容業界においては、教育の一環としてコンテストがあって、それってこれまでの歴史でもあるし、ある意味で文化とも言えるのかなと感じています。
普段の自分とは違う部分を引き出したり、新しい自分を探そうとしたときに、やっぱり客観視できないと伸びづらい。その意味でも、コンテストは自分のいろんな能力を客観的に見られる場だと思うんです。
もちろん、そこには評価がついてくるので、本気で勝ちにいくなら傾向や対策も考えなきゃいけないですけど。
あと、さっきの神谷くんの話とも重なるんですけど、自分も学生の頃、業界誌を見て「いつかここに載りたい」と思ったり、すごくシンプルな憧れが原動力だったんですよね。
それで東京に出てきたので。今みたいに選択肢がたくさんあったわけじゃない分、シンプルに夢を持てる、目標を持てる環境だったというか。そういう意味では、いい時代にこの業界に入らせてもらったのかなとも思いますね。
内田:やっぱり何者かになるために、コンテストは必要なプロセスだったっていう時代だよね。
古城:「有名になりたい」みたいなね。超シンプルな理由。
内田:そういう意味では、今っていろんな選択肢がテーブルの上にある時代じゃないですか。その中で、コンテストが選ばれにくくなっているのも事実だと思うんですけど。
それでもなお、出る意味って何だと思う?

神谷:僕は、シンプルに“ステージ”だと思っていて。SNSはステージじゃないんですよね。もちろん、ステージを動画に撮って発信することはできるけど、やっぱりあの場のライブ感って、全然別物なんですよ。
自分もヘアショーをたくさんやってきましたけど、毎回、本当に命削るくらいの感覚で挑んでいて。今でもステージに立つときは、めちゃくちゃ緊張しますし。
あの緊張感とか空気感って、あの場でしか味わえないものだと思うんですよね。
だから“コンテスト”っていう言い方も、少しイメージを変えて、“ステージ”として捉えてもいいんじゃないかなって。
その先には、大きな会場でのヘアショーもあって。実際、明日の三都杯もヘアショー形式じゃないですか。そういう意味でも、全部繋がっている感覚はありますね。
内田:確かにね、ステージっていう言葉はいいね。すごく腑に落ちた。
ドラゴンボールじゃないけどさ、「オラ、強い奴ともっと戦いたい!」みたいに思うじゃん。でも、サロンの中だけだと、その指標が自社に限っての話になるし、売上という数字になるじゃないですか。それだけだと、やっぱつまんないよねって話なのかなって。もっとフラットな場所で、いろんな人と並んで切磋琢磨して、評価される。その感じって、すごくアドレナリンが出るよね。
古城:美容師って、サロンワークを中心にして色んなことができるから、本当に素晴らしい仕事だと思う。表現もできてね。教育も充実しているし。
内田:そうなんだよね。で、さっきの話に戻るけど、古城くんがステージ上で、あえて憎まれ口を叩くじゃないですか(笑)。でもあれって、すごく本質的だなと思っていて。上からとか下からとかじゃなくて、「自分がどう感じたか」を、一人の人間として率直に言っているというか。審査する側も、それでいいんだろうなって思うんですよね。
無理におべっかを使って、「みんな良かったですね」ってまとめるよりも、その人なりの“リアルな評価”があるほうが、やっぱり面白い。
神谷:(みんな良かったですねと言うことは)誰でもできますもんね。

(この後も、若い世代が競争することの重要性や、モデルとの関係性について、3サロンの教育カリキュラムについてなどなど、3人は熱いトークを展開。続きはPodcast チェック!)
古城さんと神谷さんが次世代へ伝えたいこと

内田:これを聞いている人は、クリエイティブや、プロフェッショナルなことに興味がある人だと思うんですけど、そういう人たちに、今何を大事にしてほしいかを最後に聞いて終わりにしようかなと。
古城:今の姿しか見えてないと、「なんでもサラッとやっている人」って映るかもしれません。でも実際には色々自分なりに考えて美容師をやってきたし、相当戦ってきたんですよ。その中で、自分自身に対して誇れることがあるとしたら、「逃げなかったこと」かなと思います。
うちの場合は、途中で師匠がいなくなったりとか、いろんな出来事もあったんですけど、その都度、自分なりに向き合ってきて。
例えば、何か仕事を頼まれた時に、無理っていうのはすごく簡単。でも、結果損をすることもあると思うんですよね。若い時に大切なことは、まず自分のキャパを広げること。それは、すごくストレスを感じるかもしれない。でも、人が成長していくときに、ずっと心地いい状態でいるって、やっぱり難しいと思うんです。
それと、聞いている皆さんに、僕なりのメッセージとしてお伝えしたいのは、今って、「なんとなくでも、いい感じ」に見せられる時代で、すごくいいと思うんですよ。ただ、本当に本物を目指すんだったら、シンプルなことをどこまで追求できるかに尽きるのではないかと。それがないとエネルギーがデザインに込められないし、広がりがないんですよね。一見シンプルって、削ぎ落とすことのように感じられるけれども、そうではなくて。何かを追求するっていう意味合いで、そこを徹底的にやらないと、自分を後々広げることができないなって気がしたの。それがちょうど去年。
内田:去年!
古城:シンプルなことを丁寧にやる。これが本当に全てのスタートだと思います。その先は、もう自由。これが僕なりの持論であり、聞いていただいている方に何か響いて、きっかけになったら嬉しいなって思います。

神谷:自分が一番大事にしているのは、クリエイティブやコンテスト、ヘアショーや、もちろんサロンワークを含めて、美容師としての可能性の中で、どんなドラマが作れるのかということ。そのために必要なことならば、絶対に突き進んだほうがいいし、どんなジャンルでも僕はいいと思います。いろんなドラマがありますから。そこに本気で、思いっきり、もう泣けるくらいやれることが、プロフェッショナルなのかなと。これからの若い子たちも、どんなことでもいいので絶対に経験して、自分にしか作れないドラマを作ってもらえたらと思っています。

内田:今日は、個人的に感慨深い回でしたね…。全コンテスターに聞いてほしいと思います。ありがとうございました!
プロフィール

古城隆(こじょうたかし)
DADA CuBiCクリエイティブディレクター
2000年DADA CuBiC入社。02年三都杯グランプリ受賞。05年よりD.D.A.講師を務める。これまで多くの業界誌にて連載ページ・作品ページを担当。2011年には故植村隆博氏との共同著書「Basic Cut Bible vol.1」を新美容出版㈱より発刊、2013年には「正確なフォルムコントロールのための スライス徹底マスター」を㈱女性モード社より発刊。2019年および2021年Japan Hairdressing Awardsにおいてグランプリ獲得。数多のコンテストで審査員を務め、その審美眼で業界の水準向上に貢献してきた。
Instagram:@takashikojo

神谷翼(かみたにつばさ)
SCREEN 代表
PEEK-A-BOOを経て、2014年SCREENをオープン。翌年には2店舗目となるSISTER. BY SCREENをオープン。ゼロの地からスタッフ3人でスタートし、6年で神戸と銀座で3店舗を展開。著書『THE DESIGN VARIATION 神谷翼のアドバンスベーシック』を2021年出版。全ての技術において理論を追求し、サロンワークを中心に雑誌撮影、国内、海外でのヘアーショー、セミナーなど多岐にわたり活動中。審査員として多くのコンテストに関わり、美容業界全体の発展に貢献している。
2010年JHAライジングスター最優秀賞
2018年JHA大賞部門グランプリ
2019年JHA大賞部門準グランプリ
Instagram:@screen_tsubasa

内田聡一郎(うちだそういちろう)
LECO代表
soucutsの庭ホスト
2003年より原宿のサロンでトップディレクターとしてサロンワークをはじめ、一般誌、業界誌、セミナー、ヘアショー、著名人のヘアメイク、商品開発など様々な分野で活躍。2018年 渋谷にLECOをオープン、2020年 セカンドブランドQUQUを、2025年には別ブランドとしてØØnをオープン。
現在渋谷1丁目に5店舗を展開。
代表として今後一層の活躍が期待されている。著書「自分の見つけ方」(2013年)、「内田流+αカット」(2017年)、「内田本」(2018年)を発売。また、シザーやシザーケースなどのオリジナルプロダクトも発売中。
Instagram:@soucut
(文/富樫聡美 撮影/GK.KAZU)