LECO代表 内田聡一郎×スタイリスト TEPPEIVoicyスペシャル対談  Vol.1 (前編) 「僕らの仕事は不要不急じゃない」コロナ自粛で再認した大切なこと

「動くことが最大の防御になるフェーズに入ったと思う」(内田)

 

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内田:自粛期間にお互い自分たちの仕事の意味を考えてきたわけだけど、世の中の空気感として、「そろそろ動き出さなきゃいけない」って感じがあるじゃない。ウチはすでに営業を再開しているわけだけど、TEPPEIはどんな感じなの?

 

TEPPEI:音楽関係やテレビ関係、出版社などが動き出して、その先に撮影が成り立つので、僕らの仕事は自分一人で動き出せるものではないんですよね。

 

内田:確かにそうだよねえ。

 

TEPPEI:ただ、5月に2本撮影をしてみて感じたのは、感染予防を徹底しないといけないし、怖さもあったんですよね。その一方で、実際にクリエイションをしてみて、幸せだなぁって思ったんですよ。こんなに沸き立つものがあるのかって。

 

内田:わかる。

 

TEPPEI:で、僕も動き出しました。今、自分の敷地内で作品撮りを進めているんです。仕事が滞っているファッションモデルを招いて、3密を避けながら制作しています。撮影を通じて、メンタリティを健全にしていきたいなと。スタイリストも写真家も、メイクもモデルも、本当にごく一部ですけれど僕が声をかけられる範囲で集まって、「こんな状況下でも撮影を続けて行かなきゃいけないよね」っていうことを徐々に波及していきたい。危機に瀕しながらも、どうしたら安全に撮影ができるのか、僕たちが自ら実績をつくる。そうすることで、怖いから何もできないというところから抜け出したいんです。

 

 
 
 
 
 
 

Private work

Photo: オノツトム

Hair: Takai

Make: Yuka Hirac

Direction&Styling: TEPPEI

Model: Takato Harashima(friday), Yuko Nagata(Holiday), miu(nvrmnd), Yi(west)

 
対談後実際にTEPPEIさんのご自宅で行われた撮影の作品
各モデルさんのパーソナルポートレートとクレイジーポートレート
 
 

内田:自粛と経済回復の因果関係を考えると、これはちょっと動き出さないダメだろうってみんなも思い始めているよね。

 

TEPPEI:僕もそう思います。それに、自粛に慣れてメンタルが落ち込んだままになる恐れもある。手や頭を動かさないことに慣れてしまうのは良くないなと。

 

内田:「動くことが最大の防御になる」というか、そういうフェーズに入ってきているよね。

 

TEPPEI:そうさんは、営業を再開した今、どんなことを感じていますか?

 

内田:俺はもう単純明快な話なんだけど、数週間の自宅待機で、プレイヤーとして髪を切りたい、髪を切ってテンションが上がるお客さまを生み出したいっていう欲求がめっちゃ溜まってた。仕事を通じて五感を満たす感覚があるんだよね。これはオフラインで代替できる作業じゃないよ。

 

TEPPEI:お客さまは戻りつつありますか?

 

内田:戻りつつあるけど100%ではないね。半分ちょいくらいじゃないかな。密をつくらないための制約もあるから。でもその分、「向き合う時間」が増えたかな。それは美容に対するものあるし、お客さまやスタッフに対するものでもある。技術やホスピタリティについてもそう。全ての事柄において、もう一度注意深く見直しているところだね。

 

TEPPEI:たとえば、スタッフとの向き合い方がどんな風に変わったんですか。

 

内田:単純にスタッフと向き合う時間が増えたのはあるかな。以前は月の半分は出張していて、なかなかスタッフと向き合う時間をつくれなかったので。それが今は、サロンワークの中で共同作業する時間も増えていて、「こいつこんなところにも気がつくようになったんだな」という具合に、うれしい発見があったりするね。

 

TEPPEI:わかります。致し方なくソーシャルディスタンスを強いられて、人と人が離れていく瞬間があったと思うんですよ。だからこそ今、一番近くにいてくれる家族やチームメンバーに対しての心の距離を縮めていきたい。「今どんなことを思っているの」みたいなコミュニケーションからはじめて、ファッションスタイリストとしてのチームでは、向き合い方が以前よりも密になりました。ニュースでもリモートワークという言葉がよく使われていますし、世の中のみんなが離れていっちゃうんじゃないかみたいな流れを感じています。でも、僕らの仕事や美容師の仕事はそうじゃないから。

 

内田:五感で感じる仕事ってことだよね。これはオンラインで代替することはできない。その一方で、確実にオンライン化を余儀なくされることもあると思う。ハンコはいらないよねとか、毎日出社しなくていいよねとか、既成概念が覆されていくわけじゃないですか。俺たちも何かチャレンジしていくというかさ、安心できる部分から抜け出さなきゃいけないんだろうなって思っているし、逆にいうとそれができない人は脱落を余儀なくされるんじゃないかな。

 

TEPPEI:ただ、サロンでお客さまの髪を切るっていう究極的なサービスは変わらないわけじゃないですか。

 

内田:物理的な制限もあるからね。

 

TEPPEI:そこについては時代に逆行するとか、淘汰されるという話では当然なく「自分たちはこの仕事を誇りにしている」っていうサロンにこそ圧倒的なニーズが生まれていくべきだと思っています。これはファッションスタイリストにも同じことが言えますね。

 

内田:とはいえ全体の母数が減っていくことは間違いないじゃない。みんなが同じ土俵に集まって競争をしているわけだから。もちろん、そこで自分たちの仕事にきちんと意味や価値を見出してやっているところは、ますます強くなると思うな。

 

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プロフィール

LECO代表

内田 聡一郎(うちだ そういちろう)

横浜市内のサロンを経て「VeLO」のオープニングに参加。2009年、姉妹店「vetica」のクリエイティブディレクターに就任。サロンワークを中心に、セミナー講師、DJ、イベントオーガナイズなど幅広い活動を行っている。2018年3月1日に自身が代表となるヘアサロン「LECO」をグランドオープン。

 

ファッションスタイリスト

TEPPEI

2002年、高校卒業と同時に上京し、都内の専門学校スタイリスト学科に入学。卒業後2年間の古着屋勤務を経て、スタイリストとしてのキャリアをスタートした。2000年〜2000年中期までの東京ストリートカルチャーの確立された存在として注目を浴び、ジェレミー・スコットやベルンハルト・ ウィルヘルムがスタイルサンプリングしたことでも知られている。現在は、スタイリストとして数々のアーティストイメージやブランドビジュアルのディレクション、2019-20AWシーズン以降のANREALAGEメンズコレクションにおけるスタイリングやChildren of the discordanceのランウェイ及びシーズンルックのスタイリングを手掛けており、特に国内のメンズファッションシーンで作品発表を続けている。またスタイリスト業と並行する形で2013年4月より妻である野々口祐子とヘアサロン「SYAN」を立ち上げ、美容室のオーナーとしての顔も持っており美容業界にも理解が深い。

 

(文/外山武史)

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