内田聡一郎さんに聞くスターの辞め方

 

 

2018年3月に独立し、渋谷にLECOをオープンさせた内田聡一郎さん。veticaで長らくスタープレイヤーであっただけに、辞めるのにもいろいろな配慮が必要だったのではと思われます。

どうして独立を決意したのか、veticaを辞めるにあたってどのような準備をおこなったのか、そして新たにスタートするLECOの展望についてお伺いしました。

 


 

スタープレイヤーが独立を考えるとき

 

―独立はいつ頃から考えていたのでしょうか? きっかけになる出来事があったのですか?

 

ちょうど3年くらい前に、体調を崩して一週間程入院をしたのがきっかけといえるかもしれませんね。その頃はめいっぱい仕事が詰まっていたのですが、すべてキャンセルになり休むことを余儀なくされてしまって。自分の100%が今の店の中で出せているか、と突然空いた時間で考えたんです。言うならば、雇われる側の方がラクですし、お給料の面でも恵まれている。でも、雇われる側にできることには限界があって、内装一つとってもそうだし、本当に自分が何も迷いなく100%の力を出せることをやってみたいという風に思ったんです。自分がやりたいことでどれくらいの価値を生めるか、チャレンジしてみたかった。

 

 

―「独立したい」と考えてから、オーナーの鳥羽さんと赤松さんにはすぐその事を伝えたのでしょうか?

 

いえ、すぐにはっきりと言うわけではなく、じわじわとニュアンスを出しました。きちんと言葉で伝えたのは1年前です。売上のある美容師が辞めたり独立したりすると、オーナーと辞めた美容師側、お互いにしこりが残ることが多い。僕の場合は、そうならないために、とにかく恩返しをしたいという気持ちが強かった。具体的には、今まではプレイヤー個人として活躍することに重きを置いていましたが、それまでは考えもしなかったスタッフの教育や福利厚生を含めた働き方、お店のあり方やレギュレーション作りに積極的に取り組みました。

 僕自身は、『売れたい』『有名になりたい』という向上心が昔から強いのですが、一方でその熱意を人に伝えることが苦手でした。なので、モチベーションが低い人は、突き放すようなところがあったんです。それはスタッフに対しても同様で、やる気がある子には目をかけるけど、モチベーションが低い子を引き上げることをしてこなかった。でも結局は、そういう子のベースアップをすることこそが、お店の質を上げるんだということにやっと気づいたんです。その甲斐あって、この1年でスタッフもお店もすごく良くなったと自負しています。

 そんな風に、自分が辞めたあともしっかり機能できるような体勢を整えていたということもあり、『独立したい』ということをオーナーに伝えたときは、あまり驚かれませんでしたね。『言うと思った』という感じでした。

 

 

―内田さんの尽力に、オーナーお二人が広い懐で応えてくれたんですね。

 

そうですね。本当に円満退社で気持ちよく送り出してくれて、やっぱりカッコいいと思うし、感謝しています。

 実は、独立にあたって、自分の下についていたアシスタントを一人引き抜いているんです。辞めるという話をしたときに、そのアシスタントの子が『一緒に行きたい』って言ってくれて、僕自身としても彼がついてきてくれるのは心強かったので、すぐにオーナーに相談しました。

 引き抜きは、美容業界的にはやはりご法度といえます。でも、働く場所を拘束する権限は誰にもありません。一方で、技術職として育ててもらったからには、『新しいところに行くので辞めます』では、あまりにも恩がない。先程もお話ししたように、僕の場合はプレイヤーとして15年間店を支えてきたという自負と、最後の1年で働き方の新しいベースを作ったという事実があるというところから、何回も話し合いを重ねました。僕が今までお店にそれほど貢献していない中での引き抜きだったら、やはりダメだったと思いますが、すごく売上のあるスタイリストを引き抜くわけではないということもあり、最終的には認めてもらえました。改めて、オーナー二人をリスペクトし続けていこうと感じましたね。

 

 

>LECOは自分が通ってきた文化

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