「美容師は相手ありきの仕事だから」当たり前を貫き、殻を破り続けた17年。 師匠・VANから学んだこと―美容師のコトダマ Cocoon泰斗さん―

 

第一線で活躍する美容師たちの人生を変えた「言葉」に迫る連載企画「美容師のコトダマ」。今回登場するのは、表参道・銀座に店舗を展開するデザインサロンCocoon(コクーン)のディレクター泰斗(たいと)さん。髪質や骨格を生かして、仕立てるようにカットをするノンブローカットの考案者VAN(バン)さんのもとで、技術とデザインを磨いてきました。多くのお客さまに支持される一方、数々のコンテストでも受賞歴がある実力派スタイリストです。

 

デザイン力はもちろん、スタッフ同士のつながりの強さ、お客さまとの関係性の深さでも知られるサロン、Cocoon。アシスタント時代から17年を過ごしてきた泰斗さんが語るのは、すべてCocoonの原点へとつながる言葉の数々。それは、美容師としての在り方の礎となった、師匠・VANさんから受け継いだ“コトダマ”でした。

 


 

美容師は相手ありきの仕事だから

 

 

Cocoonに入って間もないアシスタント時代から、師匠のVANに日々言われてきた言葉です。

 

「みんなまず自分だから。自分のことしか考えていない。だから気が利かないし、うまくいかない。相手を感じて、自分に何ができるかを考えろ。美容師は相手ありきの仕事だから。」

 

この言葉は、自分にとっての仕事の軸となっています。

今やっていることは、本当に相手のためなのか。それとも自分の都合なのか。そんな問いを何度も投げ続けられてきました。

 

お客さまとの会話ひとつとっても、その目的は居心地よく過ごしてもらうためのものなのか、それとも“仕事をしている自分”を見せたいだけなのか。

「叱られたくない」「早く仕事を終わらせたい」そんな気持ちで動いていないか。常に自分を見つめ直し、振り返るよう教えられました。

 

自分では相手のために行動しているつもりでも、実際には「どう見られるか」「どうありたいか」といった自分本位の気持ちが先に立つこともある。そのことに、何度も気づかされました。

 

 

スタイリストになってからも、常に同じ思いで仕事に取り組んできました。自分が思う“美容師像”に寄せたデザインになっていないか。時間効率や、自分の都合を優先していないか。そして、目の前のお客さまにきちんと向き合えているか。

これはCocoonのノンブローカットの考え方でもあるんですが、同じことをしているようでも、「相手スタート」か「自分スタート」かで、すべてが変わる。その違いに気づかせてくれる、自分にとっての原点の言葉です。

 

キャラを増やせ・反対を食え

 

 

もともとの自分は、根暗で、オタク気質。いわゆるコミュ障です(笑)。好きなものもメインカルチャーよりサブカル、オーバーグラウンドよりアンダーグラウンド。そんな性格だったので、正直、ありのままの自分では、届くお客さまには限界があったと思います。そんなときにVANに言われたのが、「キャラを増やせ」という言葉でした。しかも、中途半端じゃなくて、「恥ずかしいと思うくらい演じてみろ」と。

 

何から始めればいいかわからず、まずは自分と真逆のタイプのスタッフを徹底的に観察しました。話し方や立ち振る舞い、声のトーン、表情まで真似してみる。周りに「どうしたの?と言われるくらい振り切ってやれ」と言われた言葉通りやってみたんです。最初は “真似”だったのですが、続けていくうちに、それが少しずつ自分の中に馴染んでいきました。Cocoonにはいろんな性格のスタッフ、お客さまがいるので、よく観察し、とにかくたくさんの人と話して、表現をマネました。気づけば、これまで苦手だったタイプのお客さまにも自然に対応できるようになっていたんです。今の自分は全く無理をしている感じはないのですが、元の自分を考えるとだいぶキャラ変したなと思います。

 

 

同時に言われ続けていたのが、「反対を食え」という言葉でした。好きなものは自然と情報が入ってくるけれど、嫌いなものや興味のないものは、自分から掴みにいかないと一生わからない。大事なのは最終的に嫌いなままでもいいから、ちゃんと知ること。そうすれば、自分とは趣向が違うお客さまとでも、きちんと向き合えるようになる。

 

実際、VANは年齢も趣味も価値観も異なる、幅広いお客さまを担当しています。本人も「もともとは根暗だった」と言っていますが、その姿から感じるのは“生まれ持ったキャラ”だけではなく、“積み重ねてきた幅”で仕事をしているということ。

 

 

美容師にとって、キャラクターや感性の幅は、そのまま顧客の幅につながる。“自分らしさ”の中に閉じこもるのではなく、自分を拡張していくこと。恥ずかしさを越えて演じることと、反対側を理解しにいくこと。その積み重ねが、どんなお客さまにも応えられる自分をつくっていくのだと思います。

 

>「学ぶは“真似”ぶ」

 

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