【旅する美容師KO】「7年間、会社が人生のすべて」だった僕が、50カ国を旅した。人生は、もっと自由でいい。KOが見つけた、自分らしい生き方

 

「美容師になった。でも、この働き方でいいのか?」

 

――美容学校を卒業して、美容師として働き始めた頃はどうでしたか?

 

美容師という仕事自体は、やっぱり面白かったんです。技術を覚えて、できることが増えて、お客さんに喜んでもらえる。その部分には、すごくやりがいを感じていました。ただ、一方で「組織の中で働く」ということに、だんだん重苦しさを感じるようになっていったんです。かなり忙しいサロンだったので、厳しさやプレッシャーが組織全体を覆っているように感じて、その空気に押されるうちに、自分で自分を追い込んでしまっていました。

 

大型サロンに入社したので、将来的には自分の語学力も生かしながら会社に貢献したいと思っていたし、店長になることを目標に頑張っていました。でも、なかなか思うようにはいかない。そのうちに、心身ともに限界を迎えて、最終的には退職することに。

 

振り返ってみると、僕はすごく不器用で「会社が自分の人生のすべて」だった。思うように評価されないことも、昇進できないことも、全部「自分の人生がうまくいっていない」ということに直結してしまう。でも僕は、それ以外の生き方を知らなかった。頭では、「辞めたほうがいい」と分かっていても、なかなか踏ん切りがつかなかったんですよね。

 

 

 

――そこから、ワーキングホリデーでオーストラリアへ行くことを決めたんですね。

 

そうです。ただ、その時点ではまだ「旅する美容師になろう」なんて、全然考えていませんでした。仕事を辞めると決めて、初めて「自分はこれから何をしたいんだろう」と考えるようになったんです。それくらい、それまで仕事以外のことを考えてこなかった。

 

ちょっと本当に、生きること自体がしんどくなっていた時期でもあって。だから、まずはそこから離れる必要があると思って、ようやく辞める決心がついたんですよね。でも、仕事を辞めたら辞めたで、今度は保証が何もないことが怖かった。「この先どうなるんだろう」って。

 

ワーキングホリデーという制度を知って、オーストラリアに行くと決めてからも、かなり情報収集しました。どこに住むのか、どうやって仕事を探すのか、生活費はどうするのか…。

 

今の僕からすると、もっと気軽に飛び出しているように見えるかもしれませんけど、当時は全然そんなことなくて、ものすごく不安でした。

 

 

 

――意外です。今のKOさんのイメージとは、印象が違いますよね。

 

たぶん、それまでの自分はずっと、「こうしなきゃいけない」という価値観の中で生きていたんだと思います。美容師だったら、サロンに入って、アシスタントをして、スタイリストになって、売上を伸ばしていく。そういうキャリアが一つのモデルとしてありますよね。もちろん、それが悪いわけではない。でも僕の場合は、いつの間にか「これしかない」に変わってしまっていたんです。

 

組織の中で働いた7年間は、そういう意味でも苦しい時間でした。そんな自分にとって、オーストラリアに行ったことは大きな転換点でした。現地の人たちって、全然仕事をしていなかったりするんですよ(笑)。昼間からお酒を飲んで、ニコニコ、ヘラヘラしながら楽しそうにしているおじさんがいたりして。

 

そういう人たちを見ているうちに、ふとフランスにいた頃の記憶が戻ってきたんです。「あれ? そういえば、フランスって確かにこんな感じだったな」って。フランスにいた頃には当たり前だと思っていた価値観を、いつの間にか自分は忘れていた。そんなことに気づいたんです。少しずつ“洗脳が解けていく”ような感覚でした。

 

「こんな生き方もあるんだ」「もしかしたら、自分もこんなふうに生きていいのかもしれない」。そう思えるようになっていきました。

 

バリ島ウブドの森

 

 

――オーストラリアでは、現地で美容師として働いていたんですか?

 

はい。最初の半年間は、現地の日系サロンで美容師として働いていました。でも、そこでいろいろな人の生き方を見ているうちに、「本当にこのままでいいのかな?」と考えるようになったんです。そして最後の3カ月は仕事を辞めて、「自分のやりたいことを全部やってみよう」と。何かを達成するというより、とにかく「体験すること」を目的にして、いろんなことに挑戦しました。

 

その一つが、ケアンズでのバンジージャンプ、スカイダイビング、スキューバダイビング。これを3日連続でやったんです(笑)。そこで完全にスイッチが入ってしまった。「もう、やり切ろう」って。今考えると、スカイダイビングの翌日にスキューバダイビングをするなんて、絶対におすすめできませんけどね(笑)。

 

でも、もう勢いが止まらなくなって。安宿に泊まって、毎日のようにプールパーティーに行ったり、クラブに入り浸ったりしていました。それまで仕事しかしてこなかった反動みたいに、オーストラリアで一気に弾けたんです。振り返ると、あの3カ月は、ようやく自分の人生を自分で楽しみ始めた時間だったんだと思います。

 

マレーシア・クアラルンプール

 

 

>旅を続けるうちに、南米へ。そしてペルーで、旅が止まった。

 


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