【旅する美容師KO】「7年間、会社が人生のすべて」だった僕が、50カ国を旅した。人生は、もっと自由でいい。KOが見つけた、自分らしい生き方

 

英語を学ぶことで、美容師の世界はもっと広がる

 

 

――海外を旅する中で、美容師という仕事の可能性も改めて感じた?

 

美容師って、技術さえあれば、どこの国でも仕事ができるんですよ。それに、日本人美容師の技術力は高い。だから、もっと世界に出ていっていいと思っています。

 

一方で、海外に出て強く感じたのが、やっぱり「言葉」の大切さです。技術があっても、言葉ができれば、もっといろいろな人と話せる。相手のことをもっと深く知ることもできる。仕事の幅も広がるし、旅先で出会える人も、経験できることも増えていく。それは、自分自身が旅を通して実感してきたことです。

 

ニュージーランドクライストチャーチ

 

その感覚を一番強く実感したのが、旅先で続けてきたフリーカットでした。フリーカットって、美容師にとっては、売上や型、日々の仕事からいったん離れて、ハサミ一本で目の前の人を喜ばせるという、美容師の原点に戻れる時間でもあるんです。同時に、僕自身にとっては、髪を切りながら言葉を交わして、国籍や文化を越えて一人の人間としてつながる時間でもありました。そこで「もっと言葉が話せたら、もっと多くの人とつながれる」と実感したんです。だから、英語は単なる語学ではなく、自分の可能性を広げ、世界とつながるためのチケットだと思っています。

 

フランス・パリ凱旋門

 

 

――その経験が、現在KOさんが運営する美容師向けの英会話スクールにもつながっているんですね。

 

「海外で働きたい」と思っている日本人の美容師さんは、実は結構いるんですよね。それに、インバウンドの影響で、外国人のお客さんに対応するために英語を身につけたいという人も増えています。でも、「英語ができないから無理」と最初から諦めてしまう。それって、すごくもったいないと思うんです。

 

美容師には、すでに専門的な技術があります。そこに英語が加われば、海外からのお客さんを担当することもできるし、海外の美容師と交流することもできる。セミナーをしたり、逆に海外の技術を日本に持ち帰ったりすることもできる。英語は、単に会話ができるようになるためのものではなくて、美容師としての可能性を広げるツールなんですよね。

 

 

 

――英語コーチングを始めるにあたって、最初から事業としていくことを考えていたんですか?

 

最初は、オンラインで旅をしながらできるし、「うまくいったら面白いな」くらいの感覚でした。でも、僕は仕事に関しては結構ストイックにやってきたので、完璧主義な部分もあって。自分の中にちゃんと教えられるものがない状態で、お金をいただくのは不誠実だとも思っていました。

 

英語を話せることと、英語を教えられることは、まったく別物なんですよね。そこから、「どうしたら人に教えられるんだろう」と考えて、英語コーチとして必要なことを一から勉強しました。今では14名ほどのコーチと共に、オンラインでマンツーマンの指導をしています。

 

自分が旅をしながら感じてきた「英語ができることで世界が広がる」という感覚を、今度はほかの美容師さんにも届けられるようになったのは、すごく面白いですね。

 

フィンランド・ロバニエミにて、オーロラ鑑賞

 

 

「やり方」ではなく、「あり方」を伝えたい。

 

――KOさんのこれまでのキャリアを振り返ると、最初から明確なキャリアプランがあったわけではないんですね。


全然ないです(笑)。むしろ、ずっと迷っていました。美容師になったときも、会社を辞めたときも、オーストラリアへ行ったときも、世界一周を始めたときも、「これが自分の正解」と思っていたわけではありません。その時、その時で、自分が興味を持ったことに進んできただけなんです。

 

美容師という仕事は、どうしても「売上を上げる」「指名を増やす」「有名になる」といったことが、成功の基準になりやすいじゃないですか。もちろん、それも大切です。でも、それだけが人生のすべてじゃない。

 

僕自身、海外に出て、いろいろな人の生き方を見て、「人生って、もっと自由でいいんだ」と思えるようになりました。だから、仕事や生き方に行き詰まっている美容師さんにも、そういう視点を持ってほしいんです。

 

 

 

――最後に、これから美容師を目指す人や、今の働き方に悩んでいる美容師に伝えたいことはありますか?

 

「もっと自由に考えていいよ」と伝えたいですね。美容師になったからといって、美容師だけをやらなきゃいけないわけじゃない。休んでもいいし、旅をしてもいい。英語を学んでもいい。今いる場所が苦しいのであれば、一度そこから外に出てみてもいい。「自分にはこれしかない」と思い込まなくていいんです。

 

一度外に出てみたら、まったく違う景色が見えるかもしれない。僕にとって旅は、いろいろな国を見ることだけじゃありませんでした。自分の中にあった「こうしなきゃ」という思い込みを、一つずつ壊していくことだったんだと思います。だから、これからも自分自身がいろいろな場所へ行って、いろいろな人に会って、そこで感じたことを発信していきたい。

 

「こうすれば成功する」という答えを教えるのではなくて、「こんな生き方もある」と選択肢を見せる。それが、これから自分がやっていきたいことなのかなと思います。

 

 

プロフィール
世界を旅する美容師
KO コウ

1990年、カナダ生まれ。小学4年生から高校1年生までフランスで暮らすなど幼少期から異文化に触れて育つ。帰国後、美容学校を卒業し、首都圏に展開する大型サロンに入社。7年間勤務した後、ワーキングホリデーで渡豪し、現地サロンで美容師として働く。その後、世界一周の旅へ。50カ国以上を巡る中、ペルー滞在中に新型コロナウイルスによるロックダウンに遭遇し、約1年半を現地で過ごす。旅先では髪を切ることを通じて現地の人々と交流し、これまでに1000人以上にフリーカットを行う。現在は、日本語・英語・フランス語・スペイン語の4カ国語を操る「世界を旅する美容師KO」として活動。美容師向けの英会話スクールも運営している。
Instagram:@vivakooooh

 

(文/石田雅子 撮影/宮崎洋)

 

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