“なにもない”からスタートして10年。gricoが広げた美容師の仕事の幅 −10年サロン「grico」のブランディグストーリー前編

2011年〜2015年 起業力強化期

「家族」への想いが強まり、新しい職域に挑戦

 

 

僕がよく話している、「スタッフもお客さまも”家族”で、その家族を幸せにしたい」という考え方は、オープンのころからずっと持っていたし、サロン内外で語っていました。その気持ちがさらに強くなり、会社としてより具体的に動きはじめたのは、オープン2年目のときに起きた東日本大震災がきっかけです。

 

それまではスタッフを美容師として立派に成長させられたら、家族を守れるし、幸せにできると考えていたけれど、もしかしたら怪我や病気で働けなくなることがあるかもしれない。そういう状態になったときにも生涯彼らを守れて、生きていける環境を与えてあげられる会社にしていきたいと考えるようになりました。

 

従来の美容室の形に追従しているだけでは、家族の一生を守ることは叶わない…。そういった想いが発展して始めたのが、独自に洋服を輸入し、サロン内とウェブで販売する「grico clothing」(2012年スタート)や、後にスタートするオンラインサロン「マルチバース」(2015年スタート)などです。

 

「grico clothing」は海外から独自に買い付けてきた洋服を店内とウェブで販売するプロジェクト。スタート直後はエザキさん自らが海外出張をして買い付けていた。

 

 

目指すのは、終身雇用ができる企業

 

美容の仕事を今までと変わりなく、カット、ヘアカラー、パーマの枠に限定していたら、どんなサロンでも生産性に限界があるのはもちろんのこと、生涯スタッフを守りきるのは難しいと思うんです。ファッションや教育などヘアスタイルをつくること以外にまで美容師の職域を広げることで、僕はそれを可能にしようと考えました。

 

結果として今現在、スタッフには毎月の衣装代として1万5千円。結婚祝い30万円、出産祝い20万円、育児手当てを毎月3万円出せていますし、今後もそれを続けられるだけの余剰をしっかり売り上げられています。

 

また2014年には別会社として株式会社ピクチャートップを設立しました。こちらでは仲間とともに100年かけて、「多くの人が気軽に通えるサロン」を全国に100店舗つくることを目標に掲げています。今、その1店舗目が営業をスタートして2年目に入りました。店舗数が多ければ関われるスタッフもお客さまも多くなり、それだけ幸せにできる人数が増やせます。それが100店舗計画のねらいです。

 

お客さまを巻き込み、つなげる「LAST FRIDAY」

 

 

お客さまも巻き込んだ動きとしては、毎月最終金曜日に行なう「LAST FRIDAY」というお客さま交流イベントをこの時期にスタートさせました(2014年スタート)。

 

これはお客さまや、僕らとつながっている人と『grico』との、コラボイベントです。お客さまの中には企業に勤めていて僕らも知っているようなサービスを動かしたり、企画を立てたりといったお仕事をされている方もいれば、素晴らしいクリエイターもいらっしゃいます。そういった方々の力を借りてお客さま同士、ひいては原宿というエリアを盛り上げていけたらと願ってはじめました。例えば落語会を開いたり、原宿ラフォーレに入っているセレクトショップの限定店を『grico』で開いてもらったこともあります。

 

このイベントにきたお客さま同士がつながって、それが夢を叶えるきっかけになった、なんてうれしいできごともありまし、新聞に取り上げてもらったこともあります。

 

 

若いお客さまにとって僕たち美容師は、お兄さんやお父さんみたいな存在。そんな僕らがいつも新鮮なことをやっていたら、お客さまも飽きないし、うれしいと思うんですよね。このイベントはその1つのアプローチとして、今も下のスタッフが中心となって続いています。

 

>後編へ続く

 

プロフィール
grico代表
エザキ ヨシタカ

都内有名サロンで勤務後、23歳で独立。フリーの美容師として月に340万円を売り上げる。2008年、24歳で原宿に「grico」をオープン。2016年原宿に「TORA」、心斎橋に「BECCO」を同時にオープン。 ヘアサロン「air(エアー)」の木村直人さんと共同ではじめた会員制コミュニケーションサロン「Multiverse」の運営など多方面で活躍。

 

(取材・文/福田真木子 撮影/河合信幸)

 

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