来店が1名だったオープン日。新卒採用や店舗のクローズで加速した経営の軌跡。―10年サロン「STRAMA」のブランディングストーリー前編

2005年〜2007年 マイナススタート期

初日の予約はゼロ。最初のお客さまのカットで指を切り、散々なスタートを切る

 

 

美容師を目指したころから、自分の店を持ちたいと思っていました。1995年から『DaB』で働いていて、はじめて独立の意志を伝えたのが2001年の年末。それから、独立や開業に当たって必要なことを師匠に教えてもらいながら、計画を練っていきました。ひたすら事業計画書にダメ出しされましたが、『DaB』ができてからの経緯を教えてもらえたので、すごく勉強になりました。

 

店から提示された独立の条件は二つ。スタッフを連れて行かないことと、お客さまの連絡先を持って行かないことです。当時はSNSが活発ではなかったので、今みたいに美容師がSNSで直接お客さまと連絡を取ることもできません。お客さまがきてくれるかわからない状態で独立して、やっていけるのか確証はありませんでした。

 

2004年の年末に退社して、『STRAMA』がオープンしたのは2005年3月。セット面は4席、シャンプー台は3台でスタートしました。スタッフを連れて行かないことが約束でしたが、話を聞きつけたスタッフのうち何人かが僕と働くために店を辞めてしまうこともあって…。結局、そのうちの1人をアシスタントとして雇うことを師匠に認めてもらい、スタッフは2名でオープンさせました。

 

そうして初日を迎えた『STRAMA』ですが、オープン日のお客さまの予約は0人でした。前の店のお客さまには連絡できないし、友だちに電話をかけても「仕事で今日は行けない」という返事ばかり。メーカーやディーラーから届いたお祝いの花が並ぶ中、頭を抱えました。

 

唯一、友だちのお母さんがきてくれることになり、「お客さま第1号ですよ!」なんて言いながら、気合を入れてカットしていたとき、あろうことかその最中にハサミで指を切ってしまったんです。

 

前日までは店を作るための準備に追われていたので、しばらくハサミを握れていなかったのが怪我の理由でした。練習もしないまま、久しぶりにカットをしたので、手元が狂ったんです。

 

お客さまにはカットの途中で帰ってもらうことになり、僕自身もずっとタオルで止血して、営業が終わったら病院へ直行。数日後には撮影もありましたが、そこでもいい結果が残せず、オープン直後は散々でした。

 

 

ネット上で尋ね人に!? 一躍予約が殺到し、人気店への階段を駆け上がる

 

左はオープン前の工事中の写真。右は、施工や内装工事などを経て2005年3月にオープンした「STRAMA」。

 

最初こそ大変でしたが、その後は割りとすぐ軌道に乗りました。大きな要因は、フリーペーパーに独立秘話を語った記事が載ったこと。その記事を読んだ人たちが「インタビュー読みました!」と言ってきてくれたんです。

 

また、街中で偶然前の店のお客さまに会い、きてくれることもありました。あと、印象的だったのはネット上の掲示板に「豊田さん知りませんか?」というトピックが立ったこと。当時、僕が独立したことを知らなかったお客さまの間で、「病気になった」とか「美容師として失敗した」という噂が広がっていたそうです。それで途方にくれたお客さまが、トピックを立てて探してくれたんでしょう(笑)。

 

最終的に、その掲示板に「『STRAMA』という店で働いている」ということが書き込まれ、それを見た前の店のお客さまが来店してくださいましたし、「そんなに探されている美容師さんってすごい。どんな人か気になる」と、興味を持った方が新規のお客さまとしてもきてくれました。

 

おかげで、1ヵ月もすると予約がいっぱいに。営業時間を延ばすなど、とにかく必死で切り続けました。2005年の夏には、売上もオープン当初はひと月20〜30万だったところから、2人で200万円を超え、しばらくは売上が伸び続き、好調な時期が続きました。

 

好調だったのは、貸しギャラリーを運営していたことも理由の一つです。当時の物件は2フロアに分かれていて、広さは合計55坪ほど。2階部分が空きスペースになっていたので、貸しギャラリーにしたんです。アパレルの友人が展示会スペースとして借りてくれたことをきっかけに、訪れた関係者の方たちも気に入ってくれて、依頼が殺到。

 

一番いいときでは、1日6万円でスペースを貸していました。その収益に加えて、ギャラリーにきた人が美容室にも興味を持ってくれて、新規のお客さまも増えるという好循環ができ上がっていたんです。美容室の席数が足りなくなってきたので、ギャラリーは短い期間でクローズしてしまいましたが、売上に大きく貢献してくれました。

 

>トラブルが起き、勢いに歯止めがかかる。「スタッフは新卒に限る」。その意図とは?

 

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