パーマは本当に盛り上がったのか? HEAVENS NAO、DaB 河原木佑弥、nanuk 佐野正人の「パーマモリアゲヨウカイ」が広げるパーマの可能性―soucutsの庭 Vol.11―
トリッキーな佐野さん

内田:そもそも、3人はそれぞれ土台が違うわけじゃないですか。学んできた流派も違うし。3人で集まって情報交換をする中で、「やっぱりそれぞれ違うな」と感じたんですか? それとも、「意外と近いじゃん」という感じだったんですか?
3人:いや、全然違います。今も。
内田:今でも、そこは近づかないんですね。
NAO: 僕は、混ざり合う部分もあると思いますね。
佐野: 影響は受けています。
河原木: でも、育ってきた環境が違いますし、僕らももう若手ではないので、そう簡単には変わらないというか。お互いに「すごいな」と思う部分がありつつ、「自分だったらこうするかな」と考えるんです。それぞれのスタイルやつくり方を見て、自分はどう差別化しようかな、と。
内田: 僕も何回かお邪魔しているじゃないですか。営業後の練習会みたいな雰囲気がありますよね。飾らずに「俺はこうするけど、どう?」という感じで、レクチャーするというより、「自分はこうしているんだよね」「なるほど!」みたいなやり取りがある。いい意味でゆるくて、押し付けがないんですよね。「これが最適解だよね」と、答えを一つに決めつけていない感じがして。それは意識していたんですか?
佐野: それはあると思います。僕なんかは、もう「教えて!」という感じですね(笑)。nanukって、結構雑草系なので。誘われたときから、少し「A面/B面」みたいな感覚はありました。
内田: 歴史のあるサロンですからね、DaBもHEAVENSも。
佐野: そうなんですよ。だから正直、やっていることは知りたいけど、「A面、このやろう!」みたいな気持ちもありました(笑)。でも、誘っていただいたタイミングもよかったし、こんな機会はなかなかないじゃないですか。実際に会ってみたら、NAOさんも河原木くんも全然気取った感じじゃないし、僕もこんな感じなので、聞きたいことを聞きやすかったんです。それなら、自分にとって得しかないですよね。nanukの立ち位置については、ずっとモヤモヤしていたところもあったので。
内田: でも当時って、もはや「パーマといえばnanuk」だったじゃないですか。すごい人がたくさんいて、雑誌でもInstagramでも目立っていて。「パーマはnanukの専売特許です」みたいなイメージがありましたよね。
佐野: 外向きにはそういうイメージを打ち出していたんですけど、中ではモヤモヤしていました。正直、今もそうなんですけど(笑)。満足していないというか。だからこそ、長く続いているサロンや、しっかりとした土台のあるサロンが、パーマをどう考えているのかを知りたかったんです。HEAVENSさんは、強みであるカットをベースにしたパーマの考え方がありますよね。DaBさんも、カラーサロンというイメージが強いですけど、パーマブックが出ています。僕からすると、ああいう本をつくれるだけの知識や考え方を持っているサロンから学べるのは大きい。だから、わからないことがあれば、もう素直に聞く、という感じでしたね。
内田: パーマもオリジナルの技術を自分たちでつくってきたというか、単にパーマをやっているだけではないですよね。自分たちが時代をつくってきた、という感覚はあったんですか?尖ってた時期あります?
佐野: いや、結構丸かったです(笑)。
NAO: 円錐にスポンジみたいなやつ、ありましたよね。初めて見たときは衝撃でした。「円錐に、さらに広げちゃうの? どうするの?」って(笑)。そういう、今まで教わってきたものにはなかった技術を、nanukが独自にいろいろと試していたので、魅力的に感じていたんですよ。

内田: 僕もnanukの巻き方にはびっくりしました。NAOくんや河原木の巻き方は、見ていても「ああ、なるほど」と理解できるんですけど、佐野さんは変な言い方ですけど、「なんだ、この巻き方は?」って(笑)。「これ、HEAVENSだったら怒られそうだな」という巻き方をしていませんでした?
NAO:たまにとんでもないビッグロットとか使いますよね?
内田:その時も、ミドルをすごい変な方向に巻いてたんですよ。
佐野:一応、計算はしてます(笑)。
内田: 自分の中では、今まで絶対にやらないだろうな、という巻き方だったんです。「そういうふうに巻くんだ!」って。でも、スタイリングしてみると、ちゃんと佐野さんらしい仕上がりになっていて。あれは本当に目からウロコでしたね。
河原木: かけないところを作る、っていう感覚がなかったんですよね。そのとき、たぶん内田さんもおっしゃっていたと思うんですけど、俺だったら全部もっと細かく巻いちゃうなって。僕も昔はそうだったので。そこはある意味、この会に関わったことで、巻く本数がめっちゃ減りましたね。
内田: 佐野さん、めちゃくちゃ本数少なかったですもんね。
NAO: どんどん減っていきますからね。逆のパターンもあるんですよ。佐野さん、たまにめちゃくちゃ巻いて、めっちゃゆるくかけるときもあるんです。それもびっくりするんですよね。
佐野: 巻いたあと、僕もびっくりしてますよ(笑)。
(一同爆笑)
内田: えっ、それはカットした段階で、こう巻くって決めているわけじゃないんですか?
佐野: いや、決めてます。基本的には、コテで巻く、アイロンでスタイリングするイメージなんです。お客さまが朝シャワーを浴びて、髪を濡らしてタオルドライしたら、もう可愛い状態になっている。そこを想像しながらやるので、カット中から「ここはこれで巻く、ここはこれ」って考えています。ただ、「あ、こんなにいらなかったな」ってことも多々あります(笑)。
内田: 多々あるんですね(笑)。そのときも言いましたけど、「アシスタントって、これヘルプで巻けるんですか?」って聞いたんですよ。佐野さん、トリッキーすぎて、アシスタントがヘルプで巻けない問題ってあるんですか?
佐野: 巻けないですよね(笑)。それはしょうがないですね。だからその結果、どんどん引き算していこう、ということの繰り返しなんです。でも、例えば、直毛で髪がピンピンしている方に、根元からクセ毛のような柔らかさでかけたいとき。巻かないところを作ると、ストレートのツヤが残っちゃうんですよ。しかも、そこにスタイリング剤をつけると、ストレートの部分だけツヤッとしちゃうじゃないですか。そこを考えると、根元から細かく巻いて、それをめちゃくちゃゆるいカールで曲げていく、みたいな感じ。だから、パーマをかけるというより、クセ毛を一本ずつ作っていくような感覚なんです。そういうときは、いっぱい巻いているんだと思います(笑)。
内田: 僕の中では、NAOくんが一番こっちにいて、河原木が真ん中、佐野さんがこっちにいる、というグラデーションを感じているんですよ。NAOくんが一番王道というか、美容師としての最適解になるような巻き方とカットデザインをしているイメージがあって。河原木は崩しもあるけど、正統派のスタイルもやる。一方で、佐野さんは一番トリッキー、みたいな(笑)。全然違いすぎて、理解ってできました?
NAO:理解できないっす(笑)。だから、理解するまでに時間がかかりましたし、いまだに理解できないことも多々あります。でも、なんとなく構成が複雑というか、トリッキーなんですよね。河原木くんは、どちらかというとケミカルに強い。なんとなく、この3人の中でもそれぞれ役割があるんですよね。
内田: DaBはパーマ部がすごいですよね。

河原木: 僕、カットしたお客さまの毛束を取っておいて、10本くらいに分けて、新しいパーマの薬剤の配合とかを試すんです。「こんなに傷んでいる髪に、この薬でかかるのかな?」とか、暇があったらとりあえず試してみる、みたいな習慣があって。それをパーマラボのみんなで一緒にまとめたいよね、ということで作ったのが「パーマブック」なんです。それぞれが個別に検証していたので、「結局、何がベストなんだろうね」というところを、みんなで共有することにしました。それが4年前くらいかな。そこで一度、頭の中が整理されて、そこからまた自分なりに咀嚼し始めている段階、という感じですね。基本的に、かけられない髪はないと思っています。もちろん、かけないほうがいいと判断することもあります。でも、基本的にはかけられます。
内田: みなさん、やっぱりお客さまのパーマ比率は相当高いんですか? かなり難しい髪の状態のお客さまが、パーマを求めて来られることもあるんですか?
NAO: 今はだいぶ落ち着いたんですけど、一時期はブリーチ毛へのパーマが多かったですね。今は健康的な髪の方が増えてきましたけど、当時は結構ドキドキしながらやっていました。
内田: ホワイトブリーチをしている人が来ちゃう、みたいな?
NAO: やってましたね、当時は。
nanukのパーマのムード

内田: ちょうどリスナーからも「ぶっちゃけ、ブリーチパーマについてどう思っていますか?」という質問が来ているんです。以前は流行ってましたけど、今はブリーチパーマを積極的に打ち出している人が少なくなった気がしていて。実際にやってみて、やっぱり難しいという見解になったんでしょうか?
NAO: 当時は、カラーからパーマに移行するお客さまが結構多かったんですよね。そういう方がパーマをかけに来ることも多かったんです。でも、ブリーチ毛に対して「ここまでならかけてもいい」「これ以上はやめておいたほうがいい」という線引きは、それぞれにあったと思います。
河原木: 僕はブリーチパーマも結構得意なんですけど、あまり打ち出したくはないですね。実際にやってみて、施術後に定着しないお客さまがめちゃくちゃ来るようになったんです。「あの人のところに行ってブリーチパーマをかけてもらったほうがいいよ」って、他の美容師さんから紹介されて来る方もいて。でも、そういう方って一回きりなんですよね。僕はそういうスタンスで美容師をしているわけではないので、「あ、こういうお客さまがいっぱい来ちゃうんだ」と思って。それからは、一切打ち出すのをやめました。今は、それもできることを既存のお客さまに伝えてあげるくらいですね。新規集客には全然向いていないと思いました。ただ、ブリーチパーマができる美容師さんは意外と増えていると思いますし、需要もずっとあるとは思います。
内田: 単純に、カラー自体が中明度化しているというか、高明度のカラーが下火になってきていますよね。むしろ、黒髪や茶髪のほうが可愛いよね、というムードもある。だから、パーマにとっては追い風ですよね。
nanukは、そこを数年前から切り開いてきたパイオニアだと思うんです。僕の中では、違うと言われるかもしれないですけど、洗いざらしでいい、直毛の人がもともとクセ毛だったかのように見せたい、というムードを仕掛けてきたのがnanukというイメージなんですよ。今となっては、若い子たちも当たり前のように、くしゃくしゃっとした髪がいい、飾りすぎていない雰囲気が好き、という感覚でパーマをかけている印象があります。そういう、ほかの2サロンとは違うムードの作り方でパーマを仕掛けているイメージがあるんですけど、それは意図的なんですか?

佐野: そうですね、意図的ですね。最初に始めたのは、うちの高橋(nanukディレクター・高橋忍さん)なんです。「外国人の子どもの髪の毛って可愛いよね。柔らかくて」って。あれをどうやったら再現できるんだろう、というのを研究し続けて、今に至る感じです。だから、パーマといっても、毛先から巻き髪風にするというより、根元からどうやってクセ毛にできるか。日本人の硬い髪をどうやって柔らかく見せられるか、ということをオープン当初からずっとやってきたんです。そういう意味では、根元が重要、という感じですね。
内田:「もともとこういう髪です」みたいな自然な感じが、すごくnanukっぽいなと思って。
佐野:楽が一番。再現性が一番です。
内田:誤解を恐れずに言うと、僕にとっては一番わからないゾーンなんですよ(笑)。僕はどちらかというと、造形美というか、黄金バランスみたいなものを意識して作るのが好きなんです。「この毛はこう動いたほうが上手いよね」という考え方があるじゃないですか。それをぶっ壊したのがnanukっぽいな、というイメージがあって。NAOくんはどちらかといえば王道を通っているし、今もそういうスタイルが好きだと思うんですけど、佐野さんと接するようになって、そのあたりは変わったんですか?
NAO:結構、影響は受けましたね。仕上げも「あ、これくらいでいいんだ」って。佐野さんの領域までいくのは不安ですけど(笑)。質感やタッチ、量感、柔らかさといったところは影響を受けています。円錐ロッドを使うようになったのも、その影響ですね。いい部分を本当に吸収しながらやっている、という感じです。

内田:長年見ていますけど、NAOくんはここ数年で変わった気がします。もう少しきっちり作る人というイメージがあったので、今はすごく崩し始めているな、と見ていて思うんですよね。河原木も、そういう影響はありますか?
河原木:あります、あります。それこそ、最初に佐野さんのカットベースを触らせてもらったときに、「こんなにウェイトを低くして、こんなに軽くするんだ」って驚いたんです。
そのときはボブを切っていたんですけど、フロントだけしっかりレイヤーを入れて、あとは本当にワンレングスみたいな感じで。外側のカットベースはワンレン、顔まわりにマッシュを組み合わせたようなスタイルなんですけど、セニングで計算して、パーマをかけたときにここから動くようにすいている、という話を聞いたんです。パーマをかける前から、そんなことを考えてセニングを入れたことがなかったので、「なるほど」と思いましたね。
内田:カットベースに関して、nanuk的なメソッドはあるんですか? ウェイトを低く設定しようとか、そういう共通言語のようなものは?
佐野:共通していることといえば、ゆとりを残すというか、しっかり切らないっていうのかな。パーマをかけることで少し上がったり、動きが変わったりするので、そういう変化を見越して、余裕を残してカットするというのは共通していると思います。あとは毛量調整に関していうとセニングも使うし、レザーも使うし、スライドカットもストロークカットも使う。それぞれを使い分けています。できれば、スタイリング剤をたくさんつけなくても、簡単に束感が出せるようにしたいんです。だから、質感ですかね。クセ毛の人のような質感を目指しています。
僕の中では、ファッション誌に出てくる外国人のヘアって、スタイリング剤をべったりつけるというより、わりとそのままというか、いかにナチュラルに見せるか、というイメージがあって。そこを結構目指していました。
内田: それって、ある意味、日本人にとっては一番難しいゾーンな気がしていて。これまでの美容師の感覚では、むしろNGとされてきた領域というか。「ヨーロッパの人だから可愛いのであって、日本人にこれを作るのはNGじゃない?」という空気感ってありませんか?
NAO:どうしても、クセ毛っぽい質感のスタイルって、再現するのが難しく感じるところはありますよね。感度の高いお客さまなら、たぶんいいと思うんですけど、しっかりパーマがかかっているほうが再現性は高いんじゃないか、という思いも実はあって。そこが結構、ふわふわしているところですね。
内田:それ、僕もすごく思っていて。お客さまの感度が高ければいいですけど、このかかり上がりで「パーマがかかっていない」って思われちゃわないかな、というスタイルもあるじゃないですか。それをどうプレゼンしていくのかも気になります。nanukだからこそ、お客さまもそういうスタイルを求めて来ているんだと思うんですけど。うちだったら「あ、これ絶対にかけ直しだな」って思われそうですよね(笑)。
佐野:カウンセリングのときに、お客さまがどんな言葉を使うかを大事にしています。「パーマをかけたい」のか、「クセ毛っぽくしたい」のか。あとは、「ちょっと曲がるくらいでよくない?」みたいな話をしたときに、お客さまが「そうです、そうです。そのくらいです」って反応するかどうか。そういう方は、パーマの持ちをそこまで重視していないこともあります。

河原木:もともと、そういうスタイルを見て来店されるお客さまも多いので、最初からそういうパーマを求めている方が多い、ということですよね?
佐野:そうですね。ただ、内田さんがおっしゃっていたように、「それだとゆるくない?」というケースは、もともとあるんですよ。実際にかけ直しになったケースも含めてデータを取っていくなかで、「パーマをかけたいというお客さまが求めているのは、こういうリッジ感なんじゃない?」と話し合うこともあります。お客さまとの会話から、「この人はクセ毛っぽくしたいけど、求めているのは、しっかりめのクセなんだな」といったことを汲み取るようにしています。
あとは、ゆるめのニュアンス系を求めるお客さまって、過去にほかのサロンでパーマを強くかけられてしまった経験がある方も多いんです。「濡れているときはこのくらいカールが出るけど、乾かすと落ち着きますよ」と説明されても、濡れているときから思っている以上に結構くるくるしている、みたいな。パーパス巻きなどで、カットがすごく上手で薬剤も使いこなせる人が施術すれば、そういうスタイルもすごく可愛いんです。でも、薬剤の使い方をそこまで突き詰められていないと、毛先からくるくるになってしまって、毛先のほうカールが強く出すぎることもある。そういう経験をして、「それは嫌だ」と思っている方が、うちに来てくださるんです。「ここなら、自分が求めているニュアンスをわかってくれそう」と思って来てくださる方も多いのかなと思います。
内田:それって、本当にここ最近のパーマトレンドとしてありますよね。「かかっているけど、かかっていないくらいでいい」みたいな。若い子も含めて、パーマってそれくらいのかかり具合が可愛いよね、という感覚がある。そういうスタイルが、この数年で一気に定着したと思うんです。その分、お客さまもパーマに対する感覚が変わってきているというか、「パーマってこれくらいなんだよね」という認識になっている。ここ数年で、パーマのレベルも上がってきたと思います。だからこそ、さっき河原木さんが言っていたように、結局はカットだよね、という話になってくるんですよね。
河原木:僕、デビューした頃は、26ミリとか24ミリ以上のロッドで巻いていたら失客するよ、って言われていました。「失客パーマだよ」「失客レングスだよ」って(笑)。怒られましたもん。「絶対にお客さまは帰ってこないよ、あれは」って。でも、当時はガチガチにパーマをかけるものだと、完全に思い込んでいたので。そこから、今までとは違う新しい自分のテリトリーに入ったような感覚がありましたね。