パーマは本当に盛り上がったのか? HEAVENS NAO、DaB 河原木佑弥、nanuk 佐野正人の「パーマモリアゲヨウカイ」が広げるパーマの可能性―soucutsの庭 Vol.11―
複雑化するパーマ技術

内田:そんななかで、ちょっと踏み込んだ質問をしたいんですけど。僕はパーマといえばDouble、という時代を通ってきたんですよ。Doubleさんって、オール平巻きなんですよね。しかも、結構細かく巻くけど、最後はロッドとロッドの隙間の空け方で成立させる。さっきも話したように、カットが土台にあるから、パーマの巻き方は全部一緒でいい、という考え方だったじゃないですか。今もおそらく、そうだと思うんです。当然、円錐ロッドを使ったり、ミドルを特殊な方向に巻いたりするわけではないですよね。リスナーからも、「今は巻き方も薬剤選定も前処理も多様化しているけれど、そのなかでも、あまり複雑にせず、もっとシンプルになるべきなんじゃないか」という意見がありました。技術が多様化したことで、カットベースに対してどう巻くかという判断が、さっきおっしゃっていたように、その人にしかわからない領域になっている。つまり、複雑化しすぎているんじゃないか、という問題意識も僕の中にもあるんです。このあたりについて、お三方の見解を聞きたいです。
NAO:平巻きのウェーブが好き、縦巻きのウェーブが好き、デジタルパーマのウェーブが好き、というのはそれぞれあると思うんです。でも、ずっと同じ仕事をしていると、自分自身がマンネリ化してくるというか、それ以上成長できないんじゃないか、と思うこともあって。だから、できるだけ自分の仕事に少しずつ新しいものを取り入れて、常にドキドキできるような仕事の仕方を意識しているんです。そういう意味で、いろいろ試していますね。平巻きを推している時期もあれば、半年後には縦巻きを推していたり。時期によって結構変えます。
内田: それは直感的に変えているんですか?
NAO:お客さまも、一周してくると変化を求めるようになったりするんですよね。僕自身も、半年くらいを目安に自分の仕事を一度リセットするような感覚があって。そういうタイミングで円錐ロッドを取り入れたりします。でも、基本的に平巻きは好きですね。

内田: じゃあ、今もシンプルに巻くことは全然あるんですか?
NAO:初回のパーマはシンプルであれ、とは思っています。円錐ロッドを使うのは、2回目、3回目にどうかけるか、という段階ですね。ずっと平巻きでいくと、どうしてもリスクが出てくることもあります。2回目に来て「前回と同じパーマをかけてください」とリクエストをいただいたとき、前回と同じ構成、同じ薬剤でかけて失敗するケースって、結構あると思うんです。前回と同じような仕上がりにするために、縦巻きをどう入れていくかとか。そうやってパーマを復活させる方法もあるので、日々のサロンワークのなかで感じたことをもとに、取り入れるようにしています。
ドライな質感に再現性はあるのか

内田:質感のトレンドって結構あると思うんです。今はこの界隈だとドライな質感がトレンドになっているのかなと。少し前まではウェットな質感が流行っていましたよね。今、質感についてはどんなことを考えていますか?
NAO:ドライは注目だと思いますね。ドライな質感で仕上げるお客さまも増えています。
内田:それは、ホットパーマってことではなくてってことですか?
NAO:そうですね。初めてパーマをかけるお客さまには、基本的にウェットパーマを提案します。ウェットのほうがスタイリングしやすいからです。ドライはもう少し難易度が高くて、お客さま自身のスタイリング技術も必要になるので、継続して来てくださっているお客さまにはドライを提案するなど、使い分けています。
内田:僕は個人的に、ドライってどうやっても難しくない? と思っていて。お客さま自身が本当に再現できるのかな、という疑問があるんですけど。
河原木:僕は、完全にドライな状態でお客さまを帰さないです。ただ、撮影した写真を見たときに、髪が光らないようには意識しています。日本のスタイリング剤って、基本的に少しツヤが出るものが多いじゃないですか。それを使うと、毛束感がくどくなったり、髪が光ってウェットっぽく見えたりするんです。だから、なるべくマットに見えるオイルやクリームを選んでいます。実際に目の前で見ると少しツヤがあっても、写真に撮ったときや発信するものとしては、マットに見えるような質感を選んでいますね。
内田: 写真に撮ると、ドライっぽく見えるということですね。
河原木:そうですね。でもお客さま自身が再現するのは難しいと思っています。だから、ホットパーマなども提案するんですけど、最後の仕上げでは、ある程度スタイルをキープできるものをつけてあげないといけない。そうしないと、最初に話していたように、感度の高い一部のお客さまにしかハマらないスタイルになってしまう。そうなると、マーケットが狭くなってしまいます。だから、なるべく幅広いお客さまに向けた提案を意識しています。
まだそこまで人数は多くないと思うんですが、パーマをかけたいと思っている人たちが求めているのは、そういうドライなテクスチャーであることも事実だと思うんです。そういうスタイルを発信しないと、求めているお客さまには来てもらえないとも思います。
ウェットでくるんとした質感は、ダンサー系やストリート系のファッションが好きな方にはハマるんですけど、もう少し大人っぽい、ファッション感度の高い方にはスルーされてしまうこともある。発信するときに、どんなお客さまに来てほしいのかを考える必要がありますよね。そういう層を取りたいのであれば、今はドライな質感をしっかり作り込めるようになったほうがいいと思います。
内田: それは、お客さまにスタイリング方法を教えることも含めて?

河原木:そうですね。お客さまには一つずつ教えるようにしています。いろいろ説明しすぎると混乱して、結局やらなくなってしまうので、「今日はこれだけ買ってください」「こういうふうに乾かしてください」と、簡単な方法を一つだけ教えるんです。それで2回目に来ていただいたときに、前回教えたことができるようになっていたら、そこにもう一つプラスする。「本当はこれをつけてから、こっちを使ってほしいんですよね」というように、少しずつ伝えていきます。店販を売りたいということではなくて、お客さま自身がスタイリングできるようになってほしいんです。まだ技術が身についていない段階なので、こちらの意図をわかりやすく、シンプルに伝えることが大切だと思っています。「これならできそう」と思ってもらわないといけないので。
お客さまって優しいから、説明すると「はい、はい」って聞いてくれるんですけど、アシスタントが横で説明しているのを聞いていると、2つも3つも一度に伝えたら、だんだん目が死んでくるんですよ(笑)。もう聞いていない、みたいな。
内田:そもそもパーマって、本来は朝、髪をちょっと水で濡らして、何かつけて、そのまま放っておいてもいい、という認識だったんですよね。それが、いつの間にかドライな質感が流行って、「どうやら乾かさないといけないらしい」「しかも、乾かし方にも空気の入れ方のコツがあるらしい」となってきた。結果、難しくなっているんじゃないかと思うんです。美容師は「ドライパーマ」ってよく言いますけど、お客さまからしたら、結構難しくないですか?
NAO: 難しいと思います。
内田:でも最近、韓国や中国寄りのコンサバ系の美容師さんたちもパーマをかけていて、ドライのスタイリングがめちゃくちゃうまいなって印象があるんですよ。でもこれ、スタイリングがうまいから、いい感じなのではと。お客さま自身が、これを再現できるのか、僕はちょっと懐疑的にドライパーマを見ているんです。
佐野:韓国の人って、自分でめちゃくちゃスタイリングしますよね。

内田:あ、自分でね。スタイリング能力が高いのか。
河原木:別のルートで聞いた話だと、韓国の人は面倒くさいから、みんな洗いざらしのまま電車に乗っているらしいんですよ。びしょびしょの状態で。毛量も多いし、ホットパーマをかけている人が多いから、会社に着く頃にはいい感じになっている、みたいな。それこそ、さっき佐野さんが言っていたように、洗いざらしでもいけることを前提にスタイルを作っている、という話は聞きました。
内田:それって、自然乾燥ということですよね。でも、今の日本のドライパーマって、結構しっかり乾かすイメージがあるじゃないですか。そこは違うのかな。
河原木:僕はできれば、ドライヤーをかけないでくださいって教えることもあります。気になるなら、タオルドライをしっかりしてもらって。僕はクリームを提案することが多いので、「このクリームをつけて、毛先だけ整えてくれればいいから」って伝えます。僕も根元からしっかりパーマをかけたい派なので、かけたパーマの毛先のテクスチャーだけ整えれば、この仕上がりになるよ、と。だから、アシスタントにもあえてあまり触らせないようにしています。
内田:そうすると、質感が硬くなりませんか? 自然乾燥だから。でも、ある程度乾いてくると……。
河原木:レイヤーが重なって、ずれながら動きが出るように切っているんです。それに、今ってカットベースとしてレイヤーを入れることを拒まれにくい時代じゃないですか。ガンガン入れてもOKな時代なので、パーマのシルエットは作りやすくなった印象があります。以前は、お客さまにバレないようにどうレイヤーを入れようかな、みたいな(笑)。