オープン翌年に売上159%アップ。経営に最も必要なのは生産効率だ―CANAANの経営理論<前編>

生産効率だけでは、信頼関係が希薄化する。新卒者を教育するには、スタッフも育つ必要がある

 

 

オープンした2012年の売上が約5,000万円だったのに対し、2013年の売上は8,000万円にまで上がりました。前年比にして159%です。しかも、2012年は2人のスタッフを中途で入れて計7人になりましたが、2013年はスタッフを1人しか雇っていないんです。7人で5000万円だったのが、8人で8000万円ですから、一人当たりの生産性が大きく上がっていますよね。

 

しかし、生産効率を上げることと、スタッフ間の信頼関係を構築することはまた別の話です。信頼関係を築くために、2015年ごろまではスタッフがどんなに大きなミスをしても、店に残ってもらうように全力を尽くしました。

 

実際トラブルもたくさんありました(笑)。でも、ミスをしたり、思うように成長しなかったりするスタッフが簡単に辞めてしまうと、関係性が希薄になると思うんです。そうならないように、「一人ひとりのスタッフが大切なんだ」と、常に言い続けていました。

 

新卒者を一から教育するためにも、すでにいるスタッフがきちんと育つ必要があります。そのためオープンから3年間は新卒者を入れず、中途採用のみに絞っていました。はじめて新卒採用を行ったのは2015年の春。このときには、先輩スタッフ間の人間関係もしっかりできあがっていました。そんな中にまだ何も知らない新卒が入ってきたことで、「この子をみんなで育てよう」と全員が一致団結。雰囲気がさらによくなりました。

 

生産性が上がれば労働環境もよくできる。スタッフの休みをしっかり確保できたのも、生産効率を高めたおかげ

 

 

生産効率を上げれば、売上が上がり、休みや保険を一気に整備できます。美容業界がなぜ休みをとらせたり、社会保険を完備したりできないのか。それは、生産効率が悪いことに理由があると思うんです。

 

2012年の時点で社会保険は完備していましたが、2013年には休みを月7日から完全週休2日へ、さらに有給もしっかり取れるように環境を改善しました。スタッフはみんなすごく喜んでいましたね。

 

ちなみに、うちではアシスタントも平等に休みをとれるよう工夫をしています。有給はミーティング中に各々が申請するのですが、アシスタントはどうしても気を遣って休みを取ろうとしません。そういうとき、「上司に取らせるための有給ではないので、アシスタントが休まなかったら上司の有給も取り消しますよ」と言うんです。こうすると、上司は部下に有給を使ってもらおうとするし、繰り返し言い続けることでアシスタントが有給を申請しやすい空気が生まれます。

 

それに、労働条件を改善すれば、スタッフが辞める理由が減り、離職率も低くなっていきます。美容室の離職率は7割とも言われますが、2013年時点でも7割が残っていました。つまり、離職率は3割です。そうできたのは、まず生産効率を上げて資本を増やし、それによって真っ先に労働条件をよくしたことが効果的だったと考えています。

 

 

プロフィール
CANAAN
長崎英広(ながさきひでひろ)

三重県出身。旭理美容専門学校通信課程卒。MINXセントラル店代表、MINX原宿店代表を経て社内独立し『CANAAN』をオープン。2017年には、MINXから完全独立。毎年国内外で数多くのセミナー活動を行い、受講者は年間1万人を超える。メーカーカラー剤開発の技術協力を行うなど、カラーでは国内トップの技術をもつ。著書には、髪書房の「ヘアカラー㊙︎レシピ」「新発想㊙︎グレイカラー」「45日後カラー逆算レシピ」、このほか著書には、女性モード社より「成功するヘアカラー」、「続•成功するヘアカラー」がある。

 

(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)

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