近くて遠かった「美容と医療」のコラボレーション airがトータルビューティーの未来を切りひらく

少子化時代を勝ち抜くための戦略

 

 

-医療との連携は、airグループが掲げるトータルビューティーのゴールの一つなのでしょうか?

 

美容の世界でやれることはほぼやってきたので、次は医療だなと思っていました。これからの時代は少子化で、新規集客が難しくなるでしょうから、ロイヤルカスタマーを増やしていくしかありません。

 

たとえば物販の場合、以前は3000円のシャンプーでも高いといわれていたのに、3万円、4万円するドライヤーがどんどん売れる時代になっています。価値観の転換が起こっているように感じます。情報が氾濫している今だからこそ、信頼できる美容師が勧める、「本当に価値があるもの」ならお客さまは買ってくださるのです。医療との連携によって、美容師の提案の幅が広がり、これまでとまた違った新しい「本当に価値があるもの」を提供できるようになりました。

 

-そもそも岩田社長は、1999年に1店舗目を立ち上げたころから「トータルビューティー」を掲げていたと聞いています。

 

その当時の美容師は、「カットが売りならカットに専念しろ、ネイルなんてちゃらくさい」という人ばっかりでした。でも、僕は美容師とお客さまの間で信頼関係が生まれたら、お客さまは「この人からもっと情報を得たい」という気持ちになるはずだと思っていました。一度関係性を築くことができれば、美容だけにとどまらず、食事やファッション、ライフスタイルにも興味を持ってくださるようになります。これは自然の摂理だと僕は思います。

 

また、僕はヘアメイク出身なのですが、現役当時はタレントさんやモデルさんが悩んでいるのは、ニキビとかそばかすだったんです。皮膚理論を知ったうえで、赤みを消すにはどうしたらいいのかなど、自分なりに研究していました。そして勉強をすればするほど、医療の領域にたどり着くんですよね。ヘアメイクは、基本的に色を載せているだけなので、下地クリームの下までは関与できません。ヘアメイク時代に医療の必要性を感じていたことが、今回の取り組みの原点です。

 

airのトータルビューティーを一人でも多くに届けたい

 

 

-今後はどのような展開をイメージされていますか?

 

医療を巻き込んだトータルビューティーをパッケージ化して、それを独立希望者に任せていくような仕組みづくりを考えています。たとえば、美容室だけでなく、エステも医療も化粧品もあるというようなパッケージ化されたビジネスを、air出身の人間が仕掛けていく感じです。

 

昔は美容師が独立する際、顧客を取り合って揉めることが多かったですよね。でも、今はSNSで個人が集客できる時代ですから、そんなことをしても意味がありません。WIN―WINの関係を続けていけるのならそのほうがいいし、airのトータルビューティーをairを辞めたあとも引き継げるのなら、それはお客さまのためにもなるでしょう。

 

でもウチはピンで十分やっていけるスタイリストも、辞めないんですよね。よく講演会で、「木村さんとか金丸さんとか個性的な美容師さんがairを辞めないのはなぜですか?」と聞かれるのですが、次々と新しい展開があって、面白いからじゃないかなと思っています。

 

プロフィール
株式会社エアーエンターテイメント
代表取締役社長 岩田 卓郎(いわた たくろう)

1999年、24歳で「air」を立ち上げ、圧倒的なスピードでトップサロンに仲間入りさせたグループ最高責任者。美容室経営という枠にとらわれず、全ての“美”が集まる総合エンターテインメント企業を目指し、ヘアケアグッズの開発や販売、エステ、ネイルサロン、人材教育などさまざまな分野を見据えた事業を展開。メーカーとの共同開発や自社製品の開発にも力をいれ、多くの美容師を抱えるairグループだからこそ出来るヒット商品を次々と生み出している。「ビューティーコンテンツファクトリー(マリコール)」をはじめとする、世界の有名ブランドがairグループに参加。医療との連携もスタートし、さらなる事業拡大をはかっている。

 

(取材・文/外山  武史  撮影/金田 裕平)

 

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