阿形聡美さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第12回「鼻息の荒い人」

「ヘアライター佐藤友美がみた 美容師列伝」。日本全国の美容師を取材してきたヘアライターの目線から、毎回「●●な人」を紹介し、その素顔に迫る新企画です。第12回めは「鼻息の荒い人」。NORAの阿形聡美さんです。

 

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(イラストレーション:カツヤマケイコ)

 

美容業界の突然変異

 

今回、阿形ちゃんについて書こうと思うと伝えたときの、QJナビ担当編集の食いつきっぷりがすごかった。

 

さとゆみ「NORAの阿形ちゃんとかどうですか?」

編集 「そのハンドル切りはスゴくいいです!」

さとゆみ「あの子、ヘンですよね」

編集 「ヘンですよね」

さとゆみ「大丈夫でしょうか?」

編集 「大丈夫です。阿形さんでいきましょう」

 

というやりとりがひとしきりあった。

 

みなさんは、阿形聡美(アガタサトミ)をご存知ですか?

 

数年前、女性美容師さんだけが登場するヘアカタログを作ったことがあります。その打ち上げに、96名の女性美容師さんが集まり一言ずつ挨拶をしてくださったのですが、その挨拶を聞いていて、とても興味深いことに気づきました。

 

その当時around40だった女性美容師さんは「男社会の中で、女性美容師として生き残っていくのは大変だけれど、一緒に頑張っていきましょうね!」と言ってらしたのですが。

当時around30の女性美容師さんは「女性というだけで集客も楽だし、男性の同期に比べて雑誌の仕事もたくさんくるし、女性美容師最高です」みたいな挨拶をされていて。

うわ、そうか。この30代と40代の感覚の違いはずいぶん大きいなと思ったものでした。

 

もともと美容は女性の仕事でした。「髪結いの亭主」という言葉があったように、女性が手に職を持とうとしたら美容師という時代がありましたよね。吉行あぐりさん、山野愛子さん、メイ牛山さん……など、日本の美容業界を作ってらしたのは女性の美容家の方々。

 

その時代から、歴史は流れ。流れて。

 

私と同世代(私、いま、ジャスト40歳です)の美容師さんたちは、男性と闘って自分のポジションを確立してきた人たち。だから、この世代の女性美容師さんたちはメンタルが完全に「男」です。

とくに表参道のど真ん中で、男中心のカリスマ美容師ブームの中を泳ぎ切ってきた女性美容師さんたちは、どんなに美しく綺麗な格好をしていたとしても、ひと皮ジッパーをむくと、その中身は男の中の男。

強く、凛々しく、雄々しく、業界の荒波を泳いできた方々です。

 

一方、いま30代前半の女性美容師さんたちは、「女性ならではの感性を大事にして」と言われて育ってきた世代。雑誌でも女性美容師特集がたくさん組まれ、サロンでもお客さまから「指名するなら女性美容師さんで」とオファーされ。女性であることが不利に働くよりも、有利に働く時代にスタイリストデビューした美容師さんたち。

この世代の女性美容師さんは、女の子っぽい人が多い。メイクもファッションも「舐められない」格好ではなく、女の子として可愛いメイクやファッションを楽しんでいるし、その無理をしない女らしい等身大が雑誌社からもお客さまからも支持されるから、男性と闘う必要もない。メンタルも女性らしい人が多いと感じます。

 

さて、前置きが長くなりました。

 

「職業夫人としての女性美容師」

「男性と闘って勝ち残った強い女性美容師」

「女性らしい感性で‘らしく’働く女性美容師」

 

ざっくり言ってそんな時代の流れの中にあった美容業界に、突然、なんか変な女が現れた。

 

NORAの、阿形聡美。

 

自分のことをエロ髪美容師と呼び、社長(NORA代表広江一也氏)のことをかずやと(裏で)呼び、月末になるとFacebookには「やばい、誰かきて。今月の売り上げ目標到達できない」と友人らに泣きを入れている土下座写真があがる。

下ネタと自虐ネタとやたらと暑苦しい美容魂ブログをごちゃ混ぜにアップする姿は、さながら女芸人のような雰囲気でして。

 

この女、ナニモノ? 突然変異? と、ごく一部界隈で話題の阿形聡美についてお届けします。

 

>傷つくことができるのはチャレンジできた人だけ

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