「二日に一回は辞めたかった」挫折だらけのアシスタント時代を越え、 “誰かを輝かせる”美容師になるまで―GRAFF今泉孝記のコトダマ―
口にする言葉が、自分を決める

学生時代、もう一人お世話になった先生がいます。瀧下先生という、僕たちと3歳しか離れていない若い先生でした。僕は学生のころからよくコンテストに挑戦していましたが、先生も学生に混じってコンテストに出場していたんです。放課後一緒に練習したり、教えてもらったりしながら切磋琢磨していました。
あるコンテストで技術を終えて審査を待っているときのこと。自分の出来に納得がいかず「うわーうまくいかなかった。最悪なんですけど。」みたいなことを言っていたんです。結果が出なかったときに恥ずかしいので、どこかで予防線を張っていた部分もあると思います。
そのとき先生に言われた言葉が、今でも強く残っています。
「それで賞に入ってたら、お前より下だった人はどう思う? もし優勝していたとしてもダサくないか? どうせなら“やりきりました、これ以上ないです”って言って終わったほうが、かっこいいだろ」

ハッとしました。口にする言葉は、そのまま自分の姿勢になる。逃げの一言は、自分の価値まで下げてしまう。そう気づかされた瞬間でした。
それ以来、自分が本気で向き合っていることほど、前向きな言葉にしてしっかり宣言するようにしています。どうありたいのか、どこを目指すのか。いい言葉でアウトプットすることで、自分の覚悟も、周りの空気も、少しずついい方向に変わっていくと感じています。
無口な店長のひと言

新卒で入社した老舗のデザインサロンは、上下関係の厳しい体育会系。僕は先輩とうまくコミュニケーションを取れるタイプでもなく、ヨイショもできない。なんなら思ったことをズバズバ言ってしまったりするので、反感を買うこともありました。
そんな中でも、話を聞いてくれたり、練習をみてくれたりと、よくしてくれる女性スタイリストがいました。ある時その先輩が「店長が今泉のことを褒めてたよ。“あいつは隠れガッツがある”って」と教えてくれたんです。
店長は、技術力もあってかっこよくて、憧れの存在でした。その一方で無口なタイプ。スタッフともほとんど話さないし、施術中もお客さまと会話をしないような人だったんです。そんな店長が、影で自分を見て、評価してくれていた。
他の先輩から厳しい言葉をかけられることも多い中で、その伝え聞いたひと言は強く心に残りました。
結果が出ず、気持ちも折れかけていた時期だったからこそ、「ちゃんと見てくれている人がいる」と思えたことが救いでした。その言葉のおかげで、もう一度踏ん張ろうと思えたんです。