「二日に一回は辞めたかった」挫折だらけのアシスタント時代を越え、 “誰かを輝かせる”美容師になるまで―GRAFF今泉孝記のコトダマ―

褒められなかった理由

 

 

スタイリストになってからは、コンテストで結果を残せるようになり、Instagramからの集客も軌道に乗って、売り上げは店舗1位を獲得。少しずつですが、自分なりに実績を積み上げられている実感がありました。

26、7歳のころ、とある大きなフォトコンテストで準優勝を受賞しました。
大きな大会で結果を出すと、サロンでも表彰される慣習があるのですが、そのときオーナーからかけられた言葉が「よかったね」の一言だけだったんです。

 

それまでオーナーに褒められたことがなかったのですが、正直そのときばかりは「おめでとう」や「よく頑張ったな」と嬉しい言葉が返ってくるものだと思っていました。周りのスタッフは褒めてくれるのに、オーナーだけはそれ以上の言葉がない。どうしてもそれが引っかかって、自分は好かれていないのかもしれない、と感じてしまったんです。尊敬している人だったからこそ、少し寂しさもありました。

 

 

でも振り返ってみると、あれは「お前ならもっと上を目指せる」という期待が込められた言葉だったんじゃないかと思うんです。当時の僕には、その言葉の本当の意味を受け止める余裕はありませんでした。独立してオーナーと同じ立場になった今、あの一言に込められた想いや温度が少しずつ分かるようになりました。期待するからこそ、あえて多くを語らない。あれは、僕の可能性を信じてくれていたからこその言葉だったのだと思います。

 

小さな言葉が、仕事の意味をくれる

 

 

独立してからはスタッフがかけてくれる日々の言葉が原動力になっています。

たとえば、3年後・5年後の計画を共有したときに、「めっちゃ面白そうっすね」と自然に言ってくれたり。直接褒められるわけじゃなくても、「この会社いいっすよね」といった声がふと耳に入ったり。そういう何気ない言葉に、背中を押されることが多いんです。


自分が仕事をする軸は“誰かのために動くこと”にあります。僕はもともと物欲もなく、お金も暮らせるだけあればいいので、油断するとなんのために生きてるんだろうってなっちゃうんです(笑)。そんなときに、スタッフの成長や、社会にとって意味のあることに関われている実感が、自分を前に進ませてくれます。

 

自分で決めたことを後悔せずにやり切ること。いい言葉を、ちゃんと口に出すこと。見てくれている人がいると信じて、続けること。

そうやってこれまで受け取ってきた“言葉の力”を、今度は自分が返していきたい。お客さまやスタッフを、ちゃんと輝かせられる側でありたいと思っています。

 

プロフィール

GRAFF hair代表

今泉孝記(いまいずみ たかのり)

1987年、福島県生まれ。国際文化理容美容専門学校国分寺校を卒業後、都内有名店に入社。2020年、銀座に『GRAFF(グラフ)』を立ち上げる。現在は東京・蔵前、東日本橋、鎌倉、大阪にも展開。現在5店舗を経営している。

Instagram:@takanori_imaizumi

 

(文/池谷美歩 撮影/菊池麻美)

 

  美容師のコトダマシリーズはこちら >>

   ライフマガジンの記事をもっと見る >>

   re-quest/QJI nstagram

   re-quest/QJ YouTube

  旬の美容師求人はこちら

 

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング