パーマは本当に盛り上がったのか? HEAVENS NAO、DaB 河原木佑弥、nanuk 佐野正人の「パーマモリアゲヨウカイ」が広げるパーマの可能性―soucutsの庭 Vol.11―

左から:佐野さん、NAOさん、内田さん、河原木さん
LECO(レコ)代表・内田聡一郎(うちだそういちろう)さんのPodcast「soucutsの庭」。大御所から同世代、さらには若い世代まで幅広い層の美容師をゲストに迎え、今考えていること、そして普段はなかなか語られることのない“思考の奥”までを、MCである内田さんがじっくりと引き出していきます。リクエストQJでは、そのPodcastの模様を記事としてお届け中!
今回のゲストは、HEAVENS(ヘブンス)のNAO(ナオ)さん、DaB MUUT(ダブムート)の河原木佑弥(かわらぎゆうや)さん、nanuk(ナヌーク)の佐野正人(さのまさひと)さん。パーマの魅力を広げるべく活動する「パーマモリアゲヨウカイ」の3人です。異なる技術や感性を持つ3人が、パーマデザインの考え方からカットベースや質感づくり、後輩への技術の伝え方まで、それぞれの視点で語り合います。多様化するパーマデザインに、正解はあるのか。そしてパーマは本当に盛り上がったのか? 三者三様のこだわりと、パーマの可能性を広げるための思いに迫ります。
パーマモリアゲヨウカイとは?

内田: 始まりました! 今回のゲストは、今巷で話題のお三方。パーマが盛り上がりを見せている美容業界で、その流れを牽引している3人、「パーマモリアゲヨウカイ」の皆さんをお呼びしました!
NAO: 初めまして! HEAVENSのNAOです。よろしくお願いします。
河原木: DaBの河原木です。よろしくお願いします!
佐野: nanukの佐野です。よろしくお願いします!
内田: 僕もそれぞれ知り合いではあるんですけど、3人が一緒に絡んでいるところを生で見るのは今日が初めてなんですよ。意外と「あ、こんな感じで絡むんだ!」って。まだちょっと掴みきれていないところもあります(笑)。ラジオを聴いてくださっている美容師さんの中にも、3人のことを初めて知る方もいるんじゃないかなと。そこで改めて、「パーマモリアゲヨウカイ」とはどんなチームなのか、説明していただけますか?
佐野:じゃあ、リーダーお願い。
NAO: 元々、スタートはコロナ禍の頃でした。当時、時間もあったのでいろんな美容師さんがさまざまな活動をしている中で、僕はパーマを勉強していて。そんなときに河原木くんに直接連絡して、一緒にインスタライブをやったんですよね。最初は使っている商材や、どんなパーマをしているかなどを紹介するところから始まりました。そこから2人で話す中で、もっと広げていこうということになって。佐野さんにも、断られるかなと思いつつDMでお誘いしたんです。怖い方なのかなと思っていたんですけど、実際は優しくて、「やりましょう」と言ってくれて(笑)。そこから3人で集まって、定期的にインスタライブをするようになりました。今ではいろんな業界誌にも取り上げていただいていますが、最初はそんな感じで、結構ゆるいスタートでしたよね。
河原木: 最初から、こういう会にしようと思って始めたわけではなかったですね。勉強会というか、情報交換の場みたいな感じで。LINEグループを作って、「こういうときはどうしたらいいですか?」と、お互いに聞き合っていました。実際のサロンワークで起きるリアルな悩みを相談し合うような場だったんです。
そのアカウント名が「パーマモリアゲヨウカイ」だったんですよ。いつの間にか誰かが勝手につけていて(笑)。カタカナで。その後、オフラインでも何かやってみようという話になって、「会の名前、どうする?」となったときに、名前がないから「パーマモリアゲヨウカイ」のままでいいんじゃないかと。そのままわちゃわちゃやっていたら、業界誌からも依頼をいただくようになって。気づいたら今に至る、という感じですね。

内田: 結成は、何年前くらいですか?
NAO: 5年くらいですかね。ちょうどコロナが終わったあたりじゃないですかね。
内田: じゃあ、NAOくんがきっかけになった感じなんですね。
NAO: そうですね。
内田: 最初は情報を共有するつもりだけだったのが、いつの間にかチームになったと。
NAO:そうですね。いろんな美容師さんが見に来てくださるようになって、そこから輪が広がっていった感じです。
内田:毎月どころか、かなり頻繁に一緒にいろいろやっていますよね。
NAO:月1回のインスタライブは継続してやっています。あとはセミナー的なものも、ちょこちょこありますね。
パーマは業界的に盛り上がっているのか?

内田:皆さんも「パーマが盛り上がってきているよね」という空気感をひしひしと感じていると思うんです。僕自身、業界に20年くらいいる中で、今が明らかに一番パーマが盛り上がっているんじゃないかなという気がしていて。そこで、まずは率直に聞きたいんです。パーマって、今、本当に盛り上がっているんですか? 今回は「パーマは本当に盛り上がったのか」をテーマに、それぞれがパーマを取り巻く雰囲気をどう感じているのか、聞いていきたいと思います。佐野さん、どうですか?
佐野: 僕は正直、ようやく盛り上がり始めたな、という感覚ですね。きっかけはいろいろあると思うんですけど、やっとセミナーなどをさせていただけるようになったな、というタイミングが今で、シェアという意味ではもっと全然いけるでしょ、と思っています。
内田: でも、nanukは流行り廃りに関係なく、ずっとパーマを推していますよね。自社に関していえば、パーマが盛り上がるも何も…という感じだと思うんです。自社以外のサロンを見て、盛り上がっていると感じるというよりは、「やっと来たな」という感覚ですか?
佐野: そうですね。一部、勢いのあるサロンさんや、新しいものをどんどん取り入れようというサロンさんでは、盛り上がっていると思います。ただ、パーマの難しいところは、サロンごとにいろんな方向性があることなんですよね。例えば、カットを軸にしていたり、縮毛矯正や髪質改善を強みにしていたりするサロンだと、パーマとは方向性が異なるので、なかなか商材を導入できないこともあると思います。カットのベースや考え方がすでに決まっているサロンもありますし、パーマを取り入れるとなると、カットの部分も含めて少し変えていかなければいけない。そう考えると踏み込めるサロンと、なかなか踏み込めないサロンがあるんです。
これは僕の感覚ですが、店舗数が多く、会社の規模が大きくなるほど、方向転換が難しい面もあると思います。一方で、若手のサロンさんは「やります、やります!」という感じで、積極的に取り入れている印象ですね。

内田:局地的、みたいな感じ?
佐野:あくまで僕の感覚ですけどね。
内田: nanukは業界的にもパーマのイメージが強いですよね。一方で、HEAVENSやDaBは、どちらかというとカットやカラーのイメージが強かった。そう考えると、nanukよりも、パーマを取り巻く変化を感じているんじゃないかなと思うんですけど、DaBはどうですか?
河原木:そうですね。内輪では確実に盛り上がっています。ただ、佐野さんが言うように、まだ世の中の美容師さん全体にまでは届いていない。だけど、もうすぐそこまで行けるんじゃないかなと思っています。
僕がこの会を始めた理由の一つに、若手にカットがうまくなってほしい、という思いがあって。でもカットのセミナーって、正直なところ、メーカーさんとの取り組みにつなげにくいじゃないですか。当時、ディーラーさん主催のデザインセミナーなどで求められていたことも、クリエイティブ要素の強いものが多くて、僕自身も少し無理をしてセミナーをやっていたところがあったんですよね。作品をつくるような感覚が強くて。でも、そういう内容を見せても、特に地方の美容師さんには、あまりピンとこないんじゃないかなと。そんな風に思ってカットだけのセミナーをやりたくても、なかなか形にできないんだよなって。内田さんのように「カットデザインを牽引します!」という立場でもなかったですし。
そうなると、やっぱり商材と絡める必要がある。そこは結構、戦略的に考えました。パーマなら、必ずカットが必要になりますよね。入り口としては、ハードめのパーマのほうが取り入れやすいんじゃないかと。カットベースにあまり左右されずに始められるので。
そして当時は、ブリーチカラーからの移行や、ストレートパーマをかけている髪への施術が難しいという課題もありました。そこで、まずは「ダメージ毛にもパーマをかけられる」という謳い方で広げていくことにしたんです。それが一番バズると思ったから。
もちろん、本心では、そういう髪にパーマをかけることだけを目指していたわけではありません。でも、まずはバズらせて、話題にしてもらう。最終的にパーマが流行すれば、みんなやらざるを得なくなるじゃないですか。そうなれば、パーマをかけるためにカットも必要になる。そんな流れを予想していて、その考えはNAOさんにもずっと伝えていました。そして、ようやくみんながパーマに手をつけ始めた。今は、カットが大事だということに少しずつみんなが気づき始めている段階なんじゃないかなと思っています。これからみんながカットを学んでうまくなれば、パーマの技術も含めて、もっとレベルアップしていくんじゃないかと。
内田:どちらかというと、パーマそのものというより、カットを流行らせたかったということ?
河原木:そうですね。うちもダブルカラーを推すメンバーが多くなりすぎて、もちろんそれはいいんですけど、みんな同じような髪型で帰っていくな、という感覚もあって。
内田:河原木くんは、最初はどういう感じだったんですか?

河原木:僕はもともと自分もくせ毛ということもあって、業界誌に載せていただいた作品を遡って見ても、ドライなウェーブスタイルや、くせ毛っぽいスタイルにデザインカラーを組み合わせたものをずっとつくっていました。やっぱりデザインカラーのほうが目を引きやすいので、それをやっていたんですけど、本当はフォルムをしっかりつくり込むスタイルがもともと好きで。そちらの方向に行きたかったんですけど依頼される内容がデザインカラーばかりだったのでそれが強い人というイメージになっていたんだと思います。サロンワークでは、特定の技術に偏ることなく、どのメニューも満遍なくやっていましたね。
内田: NAOくんも、僕の中ではカットの人というイメージがあって。それがいつの間にかパーマの人、ショートのピンパーマの第一人者みたいなイメージになっていて。そういうのも戦略的に考えていたんですか?
NAO:カラーでは敵わないなと思っていたんです。もともとカットが好きだったので、パーマを武器にしてカットと連動したデザインを見せていきたいという思いはありました。
サロンワークでも、パーマをするお客さまがどんどん増えてきていますし、パーマモリアゲヨウカイを見てくださった美容師さんが来店してくれることも増えています。
内田: 確かに、美容師さんがたくさん来ているイメージがありますね。
NAO:そういうところでも、パーマが盛り上がってきているなと実感します。じわじわ来ている感じはありますね。
佐野: 3人のところを回ってる方とかもいらっしゃいますよね。
内田: あ、この3人のところを? そういう方は、実際にパーマをかけてもらうんですか?
河原木:そうですね。「前回は佐野さんのところに行きました」みたいな(笑)。最初は、どこかの回し者がスキルチェックに来ているのかなと思ったんですけど、普通にパーマモリアゲヨウカイが好きな方でした(笑)。

内田:今となっては、セミナーにも毎回来てくれる方がいますもんね。
河原木:そもそもメーカーさんやディーラーさんからは、パーマ関連のセミナーは集客が難しいという理由で、敬遠されることも結構あったんです。「こういうことをやりたいんですよね」と相談しても、「なかなか人が集まらないんです」と言われたりして。だったら、自分たちで全部集客して実績をつくってしまえばいいんじゃないか、というところから始めました。それが今では、ほかのメーカーさんやディーラーさんと話していても、「パーマのほうが集客しやすいです」と言われるようになりましたね。
内田: 一応、カラーサロンの代表として言わせてもらうと(笑)、ブリーチカラーはみんな一通りわかっているし、デザインも飽和してきていますよね。カラー剤も新しいものが出てはくるけど、そこまで目新しいわけでもない。そうなると、オーナーさんたちがスタッフに何を勉強させたいかというと、今はパーマなんですよね。
むしろ、カラーのセミナーのほうが人が集まらなくなっているという、逆転現象が起きています。うちのサロンも割とカラーが売りですけど、今ではパーマを打ち出すメンバーが結構増えてきました。
NAO:当時、Instagramには美容師さんがいろんなスタイルをたくさん投稿していたんですけど、どれも後ろ姿ばかりだな、という印象があって。僕らが発信するなら、見た人が「かわいい」「かっこいい」と思えるような、ファッション性のあるスタイルを届けたいよね、という思いがありました。だから、ケミカルに振りすぎず、デザインとしてのかわいさやかっこよさを打ち出そうという意識は強かったですね。
河原木: 僕らのところに仕事の依頼が来ると、巻き方や薬剤の話を求められることが多いんですけど、最初はあえてそこを詳しく話さないようにしていました。それよりも、テクスチャーのつくり方や、こういうカットをするといい、といった、少しマニアックな部分を中心に話していたんです。初心者向けに基礎から教えるというより、「うまい人たちはこういう世界線で話をしているんだな」と感じてもらう。そんな見せ方を意識していました。
視聴者の数を増やすことよりも、濃くて感度の高い美容師さんに届くことを重視していたんです。例えば、中堅の美容師さんや、これからサロンや自分のスタイルをリブランドしていきたい人。発信したい気持ちはあるけれど、ダブルカラーが主流だった時代に乗り遅れてしまった、というような悩みを抱えている人たちですね。そういう人たちに響くように、薬剤や巻き方を「こうすれば簡単にできますよ」と教える方向には、あまり寄せませんでした。
最初のセミナーでも、結構難しい話をしていたと思います。普段、自分が個人でセミナーをするなら、絶対に話さないような領域まで踏み込んでいましたね。でも、意外と反応がよかったんです。