ないなら、自分で作ればいい。現場視点で生まれた道具が、世界中で愛されるまで。Y.S .PARK パーク ヤンスーのびよう道

コーナーで一気に抜く。その発想が世界基準のコームを生んだ

 

 

そうして帰国し、28歳の頃に代官山で自分のサロンをオープンしました。ちょうどその頃、東京ディズニーランドの開業を控え、アメリカからダンサーやシンデレラ役のキャストたちが日本へトレーニングに来ていたんです。でも、当時の日本にはハイライトなどのヘアカラー技術をもつ美容室がほとんどありませんでした。そんな中、「あそこならできるらしい」という口コミが広がって、浦安から交代でみんなが来るようになったんです。気づけば、サロンの中は外国人のお客さまでいっぱい。代官山がディズニーランド状態ですよ(笑)。日本人のお客さまが、「入っていいのかな」と戸惑うくらいでした(笑)。

 

そんな想定外のラッキーもあって、お客さまはどんどん増えていきました。15分おきに予約が入り、そのペースでずっと仕事をする毎日です。でも、クオリティを落とさずにスピードを上げるには、根性だけではどうにもなりません。モトクロスをやっていた僕には、その感覚がよくわかっていました。コーナーで抜くのはテクニックです。でも、直線で抜かれるのはエンジン、つまりマシンの性能。性能の差は、気合いや努力だけでは埋められません。美容も同じでした。たとえばパーマなら、シャンプーを無理に早くすれば手抜きになるし、薬剤で時間を縮めれば髪への負担が大きくなる。そこは削れない。では、どこなら時間を短縮できるのかと考えたときに、行き着いたのがワインディングでした。

当時のワインディングコームは、一度クシを通すと、歯元にはテンションがかかっていても歯先は緩んでしまう構造。だから美容師は、1回、2回、3回と髪を分け取る必要があったんです。

 

 

だったら、最初から毛先まで均一にテンションがかかるコームを作れば、一度でできるはずだ。そう考えて試作を始めました。理想のピッチを探し続け、完成までにかかった時間は6年。ようやく納得できるコームができあがりました。そのコームを使えばワインディングの動作が減り、時間を短縮できる。今でも、この独自のコームのピッチを採用しているのは、世界でY.S. PARKだけです。世界中の美容師に使われるようになり、日本では美容学校や国家試験の現場でも採用されています。

 

道具を「作る」人ではなく、「使う」人だからこそ生まれるY.S.PARKのアイテム

 

 

僕は道具を使う人です。だから開発するときも、「もっと早く乾かせないか」「もっと滑りにくくできないか」と、いつも美容師の立場で考えています。目的はただ一つ。お客さまを一人でも多く、より良い技術でお迎えできるようにすることです。それは美容師にとっても、お客さまにとってもプラスになります。使うだけ、作るだけではなく、トータルで考えなければ、本当にいい仕事はできません。だからこそY.S. PARKでは、シャンプーなどのヘアケア剤からコームなどの道具に至るまで、一つの会社で美容に必要なものを幅広く開発しています。世界的に見ても、こういうメーカーはあまりありません。よく例えに出すのが、F1のフェラーリです。多くのチームはエンジンとボディを別のメーカーが作っていますが、フェラーリはその両方を自社で手がけている。だから強い。同じように、美容も一つひとつをバラバラに考えるのではなく、すべてを一つの思想で作ることに意味があると思っています。

 

 

とはいえ、最初から道具を作りたかったわけではありません。現場で「こんなものがあればいいのに」と思った。でも、なかった。それなら自分で作ればいい。いつも、その繰り返しです。

例えば、コームも、使いやすい形状のものがなかったから作りました。最初に問屋さんへ持っていくと、ブロッキングがしやすいように作った、第一歯が短いコームを見て「これは欠陥品だから取り替えてください」と言われたこともあります(笑)。それまで誰も見たことのない形状だったからです。でも、その価値を最初に理解してくれたのは、問屋さんではなく、世界中のトップスタイリストたちでした。ブラシも同じです。当時は大・中・小くらいしかありませんでしたが、それでは大雑把すぎると思ったんです。靴だって、自分の足にぴったり合うサイズを選びますよね。大・中・小しかなかったら困るはずです。ブラシも同じで、ぴったりのサイズのほうが、絶対にきれいなヘアスタイルをつくれる。だから僕は、サイズ展開を細かくしました。「そんなに種類はいらない」と言われましたが、その違いを最初に理解してくれたのも、やっぱりトップスタイリストたちでした。

僕が美容の仕事をする上で大切にしているのは、「Speedy(速く)」「Easy(簡単に)」「Precisely(正確に)」。この3つです。できるだけ短い時間で、誰にでも扱いやすく、正確に仕上げられること。それが、お客さまにとっても、美容師にとっても一番いいことだと思っています。そのために必要なものを、一つひとつ形にしてきただけなんです。

 

>一人前だと感じられたのは、御用聞きを抜け出した瞬間

 

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