「“今っぽい”を作れる、すごいおじさん」枠の2人。vacilando細井豊×PIX HAIR白神裕己が語る、美容師の表現論-soucutsの庭 Vol.6-

今っぽいを作れるおじさんたち

 

 

内田:公私ともども仲が良い2人ってことだね。意外とその遍歴は知らなかったな。それでね、俺は2人がどういうポジションなのかを話したいんだけど、「今っぽいを作れるおじさん」っていう枠が俺の中であって。それって希少価値だと思うんですよ。あ、シラ君はおじさんじゃないか(笑)。

 

細井:変わんないでしょ。

 

白神:僕、独立するのも外の仕事をもらうのも早かったんですよ。だからずっと「若い、若い」って言われてきて、「まだそんな歳なんだ」みたいな感じで見られることも多かったんですけど。でも改めて考えると、意外ともうおじさんなんだなって思いますね(笑)。

 

細井:37、8歳でしょ? おじさんだよ。

 

内田:まあ、一応おじさんに差し掛かってるくらいの感じだよね。細井君は、完全におじさんだけど(笑)。

 

細井:もう全力おじさん!(笑)

 

内田:(笑)。僕もさらに上のおじさん世代なわけなんですけど、おじさんなりに美容業界を俯瞰して見ているつもりなんですよ。その中で思うのが、40代に差し掛かるあたりにひとつ分岐点があるなと。技術は上手い。でも今っぽくない。その分岐点って、ちょうど40歳前後にある気がするんです。もっと言うと、30代半ばくらいからそうなってしまう人も結構いると思っていて。そんな中で、お二人は今っぽさを作れている人だと思うんですよ。うちの朝練で「こういうカットにしたいです」ってコピーカットをすることがあるんですけど、スタッフが参考にしているのは結構お二人のスタイルなんですよ。

今のリアルな20代が参考にしているInstagramアカウントって誰だろうと考えた時に、真っ先に浮かぶのがお二人なんです。もちろん、もっと若い世代の美容師さんもいるとは思うんですけど。でも、そのポジションにいるっていう自覚はあります?

 

細井白神:全然ないっすねえ……。

 

内田:本当にそうなんですよ。二人のスタイルを参考にしている率がすごく高い。

 

細井白神:えー! ありがとうございます!

 

 

内田:(笑)。だから僕は、お二人を「今っぽいを作れるすごいおじさん枠」だと思っているんです。それって、なぜ成り立っているんだろうって考えた時に、肩肘は張っていない。でも、普通ではない。そこに理由があるのかなと思っていて。今日はそこを徹底的に深掘りしたいんですよ。みんな本当はそれをやりたいと思っている。でも、なかなかできない。お二人ともセミナーをよくやっていると思いますけど、来ている人の多くは、そのヒントを知りたくて来ているんじゃないかな。肩肘張ったクリエイティブはやりたくない。でも、ただのサロンワーカーにもなりたくない。何かプラスアルファを乗せたい。でも、それが難しい。そんな悩みを持っている人は多いと思うんですよね。

お二人は、それをデザインで表現していると思うんですけど、今日はぜひ改めて言語化してほしいんです。なぜ時代性を捉えられるのか。なぜ今っぽさを作れているのか。

そのあたりを聞かせてもらっていいですか?

 

白神:どうぞ、細井さん!

 

細井:めちゃくちゃ難しいところふるじゃん! さっきまでベラベラ喋ってたのに(笑)。えー…。難しいですね。でも「今っぽい」っていう言葉があんまり好きじゃなくて。むしろ嫌いなくらい、その言葉を使わないんですよ。

というのも、僕、スタイリストになってからずっとやってることがあんまり変わってないんです。好きなものも変わってないし、やらないことはやらない。自分が興味のあるもの、好きな分野のものだけを見てきたんですよね。ただ、お客さんや周りの知り合いには感度の高い人が多いので、自然と新しい情報が入ってくるんです。

でも、自分自身は正直、流行りとか今っぽさみたいなものにそこまで興味がなくて。「今はそういうのが流行ってるんだね」って、その人たちから知るくらい。その中で、自分が好きだったり、活かせそうだなと思うものは取り入れるし、「そうなんだね」で終わるものもある。

だから、一応流行のキャッチはしているんですけど、普段やっていることは本当に変わらなくて。好きな映画を観たり、建築を見たり、音楽を聴いたりしているだけなんですよ。

そこから、自分の中で何か降ってくるものがあるというか。例えば、「この質感はちょっと飽きてきたから変えたいな」とか、「フォルムをもう少し抜けた感じにしたいな」とか。

カウンターカルチャーというほど大げさじゃないですけど、自分の中に小さな反抗心みたいなものがあって。飽きるんですよね。だから、その都度少しずつ変えていく。

それが結果的に、うまくハマってくれているだけなんじゃないかなと思います。

 

 

内田:じゃあ、たまたま時代性が合っているというだけで、全然狙ってない?

 

細井:マジで狙ってないっすね。あとは、スタッフにもおしゃれな子が多いので、逆に教えてもらうこともあります。「今こういうのが面白いですよ」とか。そういう話を聞いて、「じゃあ、こういうの作ってみようかな」ってなることはありますね。

 

内田:シーズントレンドみたいなものはやってないんだっけ?

 

細井:年に1回は作ってます。ただ、どちらかというとビジュアル重視なんですよね。ヘアスタイル自体を「今っぽくしよう」としているというより、面白い画をどう作るかを考えてやっている感じです。

 

 

内田:なるほどね。じゃあ髪型そのものに対して、「これを次のトレンドにしよう」とか、「仕掛けよう」みたいな意識はないんだ。

 

細井:本当にないですね。見てもらうとわかると思うんですけど、僕のカットってめちゃくちゃベーシックなんですよ。ベーシックに何かを足すとか、逆に何かを引くとか。基本的には形があるものを、どうアレンジするかという考え方なんです。

それが、僕がコンテストやフォトコンテストをやらなくなった理由の一つでもあって。

昔は僕も出てたじゃないですか。でも、ある時から、自分でも気持ち良くないのに形や構造を無理やり変えて、何か新しいものを作ろうとしている感覚があったんですよ。

別にこれを良いと思ってないし、なんか違うなっていう時期が5年くらいあったんですよね。評価はしてもらえるんですけど、自分では作っていて面白くないし、気持ち良くもない。それだったら、ちゃんと自分が気持ち良いと思えるものを作ろうと。そこから今のサロンワークや撮影のスタイルになっていった感じですね。

 

内田:じゃあ、そんなに意図的にやっているわけじゃなくて、自分が経験してきたことの中で、自然とそうなっていった感じなの?

 

細井:そうですね。自分がいいと思うものはいいし、よくないと思うものはよくない。その軸をブレさせてないだけって感じですね。

 

>流行は追ってないし、自分の好きなものが好き

 

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