「“今っぽい”を作れる、すごいおじさん」枠の2人。vacilando細井豊×PIX HAIR白神裕己が語る、美容師の表現論-soucutsの庭 Vol.6-
流行は追ってないし、自分の好きなものが好き

内田:シラ君はどうですか?
白神:今の話を聞いていて、ほぼ一緒だなって思いました。こういう話って、意外とちゃんとしたことがなかったと思うんですけど、細井さんの話を聞いていて、自分の中でも腑に落ちる部分がありました。僕も本当に追いかけてないんですよ。流行を追いかけたこともないし。
昔のInstagramを見返したりすることがあるんですけど、e’pineをオープンして、それなりにデザインが作れるようになった3年目くらいから、実はあまり作っているものが変わってないんですよね。見せ方もそうだし、やっていることもずっと一緒。もちろん流行は見ますし、スタッフに聞いたりもしますけど。でも、いい意味で、たぶん細井さんもそうだと思うんですけど、プライドがないじゃないですか。
細井:いやいやいや(笑)。ちょっとはあるよ。
白神:僕は本当にないんですよ(笑)。美容師をする上でのプライドがあんまりなくて。例えばスタッフに「今、何がイケてるの?」って聞いて、人なのかデザインなのか教えてもらうじゃないですか。それで、「あ、確かにかっこいいかも」って思ったら、そのまま取り入れちゃうんですよ。
内田:意外とすぐ取り入れるんだ。
白神:そうです。昔、僕がコンテストをすごくやっていた頃に、ヘアメイクの友達にずっと言われていたことがあって。「本当に創作をやるなら、ゼロから生み出さなきゃダメでしょ」って。美容師ではなくて、外のクリエイティブの世界にいる人たちですね。
でも実際に美容師のコンテストを見ていると、「これ、どこかで見たことあるな」みたいなデザインも結構あって。それで賞を取っていたりもする。当時の僕は、自分もコンテストに出ていましたし、賞もいくつかもらっていたんですけど、「これで賞が取れちゃうんだ」って思うこともありました。
たぶん今でもInstagramで毒を吐くイメージを持たれているのは、その頃に毒づいていた印象が強いからかもしれないです。

内田:俺も見てましたよ、それ。
白神:その時、初めてウッチーさんからDM来ましたもん。「怖い」って(笑)。
内田:伝説のPHAね(笑)。「パクリヘアドレッシングアワーズ」を開催してましたもんね。
白神:晒し上げてましたね(笑)。
細井:確かに! それで、「こいつ、めちゃくちゃヤバいことやってるな」ってなって認知した気がする。
内田:岡山にヤバいやつがいるぞって(笑)。
白神:僕、誰にも師事してないんですよ。師匠がいないし、美容業界の良し悪しみたいなこともよく分かってなかったんです。だから当時は、「別に関係ねえや」くらいの感覚でやってました。誰も見てないと思っていたし。そしたら意外と見られていて(笑)。
でも、そんなことを言っていた僕自身が、サロンワークでは真逆の考え方になったんですよね。だって僕、ド地方でやってるじゃないですか。地方は、お客さまが東京の美容師さんのスタイルを持ってくるんです。そうなると、それを再現できなきゃいけない。その上で、その人に似合わせなきゃいけない。
誰にでもなれる技術が必要だと考えたら、もうパクるしかないじゃんって思ったんですよ。だから日々のサロンワークに関しては、創作とは真逆の考え方をしなきゃダメなんだなって。
そういう部分もありましたし、そもそも、僕はカルチャーがすごく好きなんです。というか、個人的には美容以外のことの方が好きなんですよ。美容に関しては、むしろそんなに詳しくなくて。だから上手い人のデザインを見たり、スタッフの話を聞いたりして、「じゃあこれやってみよう」って取り入れていく。本当にそんな感じですね。今、細井さんの話を聞いていても、「もう一緒じゃん!」って思いました。僕も結局、ベーシックなことしかやってないので。
内田:そこにシンパシーを感じたから仲良くなれた、みたいなところもあるんだ。
細井:それは結構ありますね。セミナーをやっていても温度感が一緒なんですよ。
全然違う考え方の人同士だと、話していても噛み合わなくなるじゃないですか。
理論の組み立て方だったり、そこに何を足していくかだったり。そのバランス感覚が結構似ているんですよね。
入店して最初の10分で今日の仕上がりは決まる

内田:どういうところに共通項を感じるんですか?
細井:まず、デザインにしてもモデルさんにしても、トゥーマッチな感じがあまりないところですかね。似合わせの感覚というか、そのバランス感覚ってすごく大事だと思っていて。
上手い人も、切れる人もたくさんいると思うんですけど、僕はスタッフによく「結局、来店して最初の10分で今日の仕上がりは決まる」って言うんですよ。その10分でどこにバランスを置くかっていう比重の見極めこそが、その美容師の売りなんだって。そこを判断できるかどうかが、結局は売れるか売れないかの差になると思うんです。
だって、カットやカラーなんて15年もやれば、みんな上手くなるから。技術ではそこでは大きな差はつきにくい。だから最初の10分でどれだけ相手を読み取れるかなんですよね。
今の時代でも、僕はスタッフに「ちゃんと気を遣えよ」って言いますし。上の人にもそうだし、外の人にもそう。見た目でも、話し方でも、中身でも、人を読めるか読めないかで全然違うので。そういうところは結構似てるなって思います。こう見えて、二人とも裏ではちゃんと人の話を聞いてるんですよ(笑)。
白神:本当にそんなところまで考えてるんですか?
細井:考えてるでしょ(笑)。でも、お前からは一回も「ありがとうございました」って来たことない(笑)。最初の2回くらいはあったかもしれないけど。
白神:確かに……。俺、スタッフには絶対そういうのちゃんとしろよって言うんですよ。
でも、自分はしたことないかも、もしかして(笑)。
細井:こないだなんて、店の前まで来て、ゴミだけ置いて帰ったからね(笑)。
白神:ゴミだけちょっと捨てさせてもらって、あとトイレも借りました(笑)。
細井:舐めすぎだろ(笑)。
白神:しかも細井さんの店でね、トイレ借りたの、2回目なんですよね。あの辺、トイレないんですよ(笑)。