「まだ東京で消耗してるの?」SHIGE薫森正義×TWO柳亜矢子と考える、脱・東京の是非−soucutsの庭Vol.9−

アラフィフは、転換期のタイミング?

 

 

内田:東京でバリバリやっていたお二人が、アラフィフになったタイミングで転換点を迎えたことに、興味を持っている美容師さんってたくさんいるんですよ。二人のスタイルって、つくり出すものだったり、人となりだったり、ファッションやカルチャーだったり。そういうものをバランスよく、いわゆる「丁寧な暮らし」というか、理想的なライフスタイル感みたいなものを実践しているじゃないですか。みんな憧れるけど、一歩踏み出すのが難しいというか。

 

薫森:本当は、東京を離れたいっていう人、実はたくさんいると思うの。「一人で田舎のほうに帰ってやりたい」って思っている人もいる。でも、現実問題、お客さまがいないと生活できないじゃん。「どこでもできる仕事」って言われているけど、そこが絶対に不安なんだよね。ゼロからのスタートで、この年齢になって何年も頑張れるかっていうのがネックになっていて。でも、俺は「まあ、大丈夫かな」って思っていて。

 

内田:なんで?

 

薫森:なんでだろ……。たまたまインスタグラムをちょっとやってるじゃない。もともと新規のお客さんを取っていなかったから、インスタグラム経由でどれくらい来てくれるのかは、正直わからなかった。でも、お店を出すとなってから、「予約取りたいです」っていう反応があったから。「まあ、いけるかな」って思って。それに、関西はもともと知り合いがいるから、最悪、お友達に来てもらったりしたら。生活できるかなっていう。やっぱり、そういう確証がないと、みんな行かないよね。俺もだって、不安だから「バイトしようかな」とか思ったし。

 

:年齢とか世代もあるんじゃないですか? 年齢がどんどん上がってくると、ワークライフバランスみたいなことを考え出すし。20代って、修行や練習で美容に費やす時間も多いし、30代も撮影だったり、いろいろな経験をする。その上で、この年齢になったからこそ、「もうちょっと選択肢があってもいいのかも」「美容師ということだけに囚われなくてもいいのかな」っていう気持ちも出てくる。でも、若いうちは東京が絶対に楽しいじゃないですか。

 

薫森:まずは一つのことをやり続けないとね。

 

:東京にいることは、いいですよね。選択肢の一つとして、私たちみたいに離れるっていうこともありかもしれないけど、どっちが正解ってことではないというか。

 

内田:自分で選択できる時間があるからこそ、そもそも「やりたいこと」がない人には、向いてなさそうですよね。

 

薫森:まあ、そうだね。

 

TWOが特殊な雇用形態を選択したのは、なぜ?

 

 

内田:二人はどっちかと言ったら、すでにいろんなものが好きで、「こういうことをしたい」というのがわかりやすい。

 

:あ、私は完全に一人でやるわけではないんですよね。一人でやることも考えたんですけど。薫森さんは京都じゃないですか。物理的にお客さんが来るのは難しいっていうのもあると思うし、逆に京都だから一人でいいと思うんですけど。私は、もしかしたら東京から来られるお客さんがまだいるかもしれない。それなら、まだ自分一人の数に絞るのはなあ……って思って。来てくれる人がいる限りは、まだ体力もあるし、もうちょっとやりたいなっていうのが正直あって。だから、手伝ってくれる人を集めています。

 

内田:働き方も違うんですよね。ちょっと特殊な雇用体系。

 

:そうなんですよね。うっちーとか、今までラジオに出ていたような、教育や指導をしながらトップを走り続ける人にはどう思われるんだろうっていう気もするんですけど。この2年くらいでも、フリーランスとか個人事業主って増えてるじゃないですか。私自身はずっと組織にいて、フリーランスになるために抜けていく子も見てきたので、「フリーランスかあ……」って思っていたんですけど、どんどん変化していくことは止められない。だったら、その変化をうまく利用できないかなって考えたのが、今回の求人なんです。個人でやっている美容師さんに、1日とか2日単位でサポートに入ってもらえないかなって。

 

内田:中途で、普通にできる人をアルバイト的に雇う、みたいな感じ?

 

:連絡をいただいたのは、一人でサロンをやっている人とか。「刺激が欲しい」「誰かと働きたい」「柳さんのお店で働いてみたい」とか、そういう理由で連絡をくださる人もいて。

 

内田:あ、アシスタントじゃないのか。

 

:うん。アシスタントじゃないけど、アシスタントとして働いてもらう。

 

薫森:立場はなんでもいいってことか。

 

:そう。アシスタントとかアルバイトっていう言い方もちょっと違う気がして、「サポートスタッフ」っていう言い方をしてるんですけど。スタイリストとしてやっている子に、ヘルプで入ってもらいます。あとは、ヘアメイクさんからも連絡をいただいたかな。

 

内田:そのサポートスタッフが、結構流動的という。

 

:そうですね。長期ではなく、流動的になるんだろうなって。

 

内田:数カ月くらいで入れ替わったりする前提なんだ。

 

:そうですね……。数年前を振り返ると、「できる人しかアシスタントにつかせない」とか、「1年目にこれはやらせない」とか、ありましたよね?

 

薫森:あるよお。

 

:でも、退職が続いたりして、そうも言っていられない状況にサロンがなったりして。教育という部分ではどうかと思うけど、私がある程度のことをやれば、どんな人でも回せる、という状態になったんですよね。前は、「誰でも回せない自分」だったんですけど、誰でも回せるようになった。アシスタントが入れ替わり立ち替わりすることにも、自分がどんどん順応していったんです。だから、これからサロンで人が入れ替わることってどうなの?って心配されたりもしたんですけど、そういうことにも対応できる自分になってきちゃったみたいな。いろんなことがあって。だから、スタッフが流動的であっても、大丈夫だと思っています。

 

内田:ちょっとシャンプーしてもらうくらいの感じで、大体は自分でやると。

 

 

:スタイリストさんは、一通りのことはできると思うんですけど、そこまでその人に委ねるというよりは、あくまでサポートをしてもらう。そんなに難しいことを求めない、という感じですね。

 

内田:薫森さんは、もう一人でずっとやるんですか?

 

薫森:いや、誰かと働きたくなる時はあるのよ。募集しようかな?って思ったりもする。でもね、俺がもともと「一人でやりたいな」って思ったのは、教えること自体は好きなの。教育は好きなんだけど、「育てる」っていうのかな。しつけ的なことというか、人間としてどうあるべきか、みたいなところに疲れちゃって。

 

:わかる……!

 

内田:散々やってきたからね。

 

薫森:個性を大事にしたいと思うんだけど、しつけって、言い方は悪いけど、自分のコピーをつくることにもなるじゃん。要は「リスペクトしなさい」っていう話でもあるから。それって、ある意味、没個性な子を育ててしまうんじゃないかっていう疑問も、ずっとあったのね。だからこそ、もう十分やってきたから、技術というか、「いい美容師になるにはどうしたらいいか」っていう教育にシフトしたの。だけどやっぱり「育てる」って、営業中が大事じゃん。でも、そこはもういらないなって思ったから。ちょっと面倒くさいなっていうのもあったし。そういう意味で一人でやっているけれど、ちょっと寂しくなる時もある。

 

:お店をもう一個作ればいいんじゃないですか? 今のアトリエと、人がいるお店と。

 

薫森:いやあ…。もう誰かと働けないと思う。自分のやり方ができちゃったからね。ああ、でもどうだろうな…。だから、たまに土曜日だけお手伝いとか、それは新しいなと思った。

 

内田:このやり方は、結構ね。

 

:でも、教育っていうのとはちょっと違うから。よくないというか、育てないんじゃんって思っている人もいるのかなとは。

 

 

内田:まあ、まだスタートしてないからね。どう思うかは始まってみないと。

 

薫森:やっぱりね、一人の人と何年も一緒にいるって、結構大変。美容室って多いじゃん。それで揉めるじゃないけど、互いの価値観が変わってくるのよ。同じ方向を向いていた人が変わってくるっていうのはあるから。単発でお手伝いしてもらいたいっていう気持ちはすごくよくわかる。

 

:関係性がライトですよね。

 

薫森:そう。昔は深いほうが良かったけど、俺はもう最近、深くあることのメリットは、あまりないかな…。

 

:自分の気持ちとか、感情が入っちゃうしね。だから、うっちーとか、ずっと若い世代とやっているのはすごいなって思いますね。

 

美容業界の働き方はどうなる?

 

 

内田:僕は、昔からある教育サロンの当たり前な感覚ですけど。でも、なんか僕もだんだん聞いていて、こういう感じになるんじゃないかなっていう気がしてますけどね。

 

薫森:うっちー自身が?

 

内田:僕自身がっていうか、業界全体が。

 

:どうなるかはわかんないけど、確実に個人の人は増えてきてるし、教育するサロン、しないサロンも出てきそう。

 

内田:単純に、少子高齢化でアシスタントいないじゃないですか。おじさんとおばさんはいっぱいいるけど、若い子がいないから。だから、アシスタントが単純に回らなくなって、「今日はここ、明日はここに行ってください」みたいなのはありそう、普通に。

 

:フリーランスの人が登録しているアルバイトのサイトもあるもんね。

 

内田:貸し出しします、的なね。

 

薫森:タイミー的な?

 

:もうちょっと美容師向けのがあるんですよ。フリーランスになっても、人によってはずっと忙しいわけじゃないじゃないですか。あまりお客さんがつかないまま、フリーランスになっている人もいるので。そういう子が、スポットでお金を稼ぐ、みたいな。それが正解かはわかんないけど、そういうのが今あるんですよね。

 

内田:顧客との関係値ってあるじゃないですか。それって、長い時間をかけて築くもので、1回で構築できるものじゃない。そうすると、「この人は、こういうことに気をつけなきゃいけない」みたいなことを、どうやってそういう人たちに覚えてもらうかですよね。

 

:難しいなあ…。

 

薫森:その子に頼るより、自分が全責任を持つことだよね。気遣いだって、前よりしなきゃいけないかもしれないし。

 

内田:究極、もうノンコミュニケーションでもいいかな、くらいの感じってことですよね?

 

:そうですね、もはやね。自分とお客さんの関係性がうまく築けていて、そこにちょっと入ってもらうぐらいの感じでもいいのかなって。アシスタントに自分自身がすごい頼るわけでもなく。今までは、仕事がしやすいように、アシスタントとお客さんの関係性も築いたりするじゃん? でも、そういう感じではなくなるから。それはそれで、大変なこともありそうだけど。

お客さんの数は、今よりは減らすんですよ。だから、その中で自分がしっかり責任取れればいいのかなあって。

 

薫森:そうだと思う。

 

>脱・東京で得たもの

 

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