「まだ東京で消耗してるの?」SHIGE薫森正義×TWO柳亜矢子と考える、脱・東京の是非−soucutsの庭Vol.9−
若いうちからフリーランスになること、どう思う?

柳:自分自身の好きなものが明確になってから、個人になったほうがいいですよね。
薫森:そうそうそう。だから、タイミングって大事。最近はさ、若くて一人でやってる子もいるじゃん。ちょっと大丈夫かなって思っちゃう。まだまだ学ぶこと、たくさんあるじゃん。
柳:それ! 絶対に若いうちは、上手い人の仕事を見たほうがいいんですよ。そういうフェーズがあるじゃないですか。私たちはアラフィフだから、「自分の好きに生きてもいいかな」ってなってきてるけど、積み重ねてきているものもあるし。
薫森:あとは、理不尽なことを言われることに慣れたりとか、対処の仕方を覚えたほうがいい。社会勉強してから一人になったほうが、どんなお客さんにも対応できるから。最初に苦労するか、後に苦労するかっていう話なんだけど。
柳:でもやっぱね、後に苦労したら、自分は大人になっちゃってて、受け入れられないことも多いだろうし。若いときのほうが、絶対にいいですよね。
内田:これからそういう働き方が気になっている人でも、40オーバーになってからがオススメ?
柳:30代で独立してる人もいっぱいいますもんね。
薫森:どれだけ経験してきたかじゃない? 経験値によるかも。
柳:そうですね。下手したら、20代前半で、個人でやっている美容師さんもいますもんね。
内田:フリーランスっていう意味では、20代前半くらいからいますよね。
薫森:でも、フリーランスと個人美容室って違うじゃん。俺らは個人美容室じゃん。フリーランスって、自分のお店を持つ覚悟がない人だから。楽っていうか。
柳:そこにいつ行くかってことですよね。ワークライフバランスを求めて、そっちに行く人もいると思うんで。でも、「そこに行くの、早すぎない?」って人も絶対いっぱいいる。
そういう意味で、美容業界が無法地帯じゃないですけど、レベルでいうと、なんでもありになっちゃってないかっていうのは心配になります。
薫森:確かに。でも、どうなるんだろうね? 一人美容室が増えると。この年代の一人美容室が増えるっていうのは理解できるんだけど、若い子が、これから一生フリーランスやるの?ってなると、なかなかね。
内田:二人みたいに、一人でやっていく人が輝いて見えやすい時代になると思うんですよ。そうすると、20代くらいの時から「こういう働き方のほうが自分にはいいんじゃないか」と思う人も増えると思う。
僕も店をやっていて思うんですけど、会社に守られていると、良くも悪くも会社員だから、そこに準じてやっていけば、ある程度レールに乗せてくれる。それはいいところでもある。でも一人だと、完全に自己責任の世界になるから。SNS一つとっても、店に雇われている時は、お店が集客してくれるからそこまでやらなくてもいいけど、一人だと自分で集客しないと絶対にできないから、やるわけですよね。そこに早く放り込まれるっていうのは、悪いことでもないなっていう気もするし。そこでしか得られないことは、絶対にあると思う。バランスは難しいけど、僕の予想だと、正社員サロンをやっているからこそ思うんですけど、一人でやる人はどんどん増えるだろうなって思います。

柳:今はサロンに所属していても、正社員じゃない人って多いですよね。正社員サロンかなと思いきや、みんな個人だった、みたいな。それも多いし、増えていくだろうけど、どれだけ美容師のレベルを守るかとか、そういうことですよね。
内田:でも、二人がやっていることって、また全然別軸だと思っていて。自分の世界観とかライフスタイルを提案していくスタンスは、それとは全然違う分野というか。そういうことじゃなくて、フリーランスになる人は、稼ぐために選んでいる気がする。
柳:私たちも実績があるからお客さんが来てくれるわけで。まずは稼ぐことを優先にするのか、それとも、自分が「上手い人にやってもらいたい」と思ってもらえる人になるための努力をするのか。どっちを選ぶのかですよね。
薫森:稼ぐっていうのはね、一人じゃないほうがいいかも。一人はすぐ頭打ちになるから。「あ、こんなもんか」って思っちゃったから。すぐ限界が来ちゃう。
柳:組織のほうがね。大きい会社のほうが、そういう意味では。
内田:でも、「一人でやったほうが、手取りが多くなるんじゃないか」って、みんな思ってますからね。
柳:多分、目の前のことだけですよね、それって。
薫森:俺だって、3カ月留学するためにお店を空ける時も、お店の家賃は払うんだよ。収入がないのに。家の家賃も払うわけじゃん。保険とかも。会社だったら、そういうのはないし。休みをいただけばいいわけだし。責任だよね。自分が負担することがやっぱり増える。だから経営者って大変なんだなって、一人になってやっぱり思う。「ありがたいよね、会社って」って思う時もある。
内田:離れてみて、思うことが。
薫森:思う。どっちがいいか悪いか、は一長一短だけど。俺のタイプでいうと、「やりたいことをやりたい」っていうスタンスだから、一人のほうがいい。でも、面倒くさがり屋でもあるから、そういう面倒くさいことを、会社がやってくれてたんだなって、改めて感じる。
柳:タイプ的にね、大きくするのは向いてないですよね、私たち。
薫森:向いてない(笑)。人をやる気にさせたりするのは得意なんだよね。でも、「一生面倒見ろ」って言われたら、「いや、ちょっと嫌だな」って(笑)。
柳:たまに教えに行くくらいの感じは全然。
薫森:俺も好き。育てるのは向いてないの。
好きなものを突き詰めて、好きな世界で生きたらいい

内田:あとは、好きなものがはっきりしてるから、そこにシンクロしてくれないと嫌、みたいな(笑)。
薫森:そうそう。ただのわがままじゃん(笑)。
内田:多様性をある種、許したくないみたいなの、ありそう(笑)。
一同爆笑
柳:いや(笑)。それは……年齢もあるんですかね。
内田:こういう音楽を聴くべきとか、こうおしゃれであるべき、とか。
柳:でも、自分のルールみたいなのはね、ある。これは年齢なのかなとも思う。
内田:昔からはっきりしてるイメージある、お二人は。
薫森:はっきりしてるよね。ヘアスタイルって、好きなものを突き詰めると「自分らしさ」ってなってくるじゃん。それと一緒で、好きなものを見続けると、「あ、これは私の体の一部だ」って感覚が出てくるから。若い美容師さんには、そういう経験をしてほしいな。
柳:自分の好きな世界で生きたらいいと思います、私は。さっき言ったみたいに、「この世界で私は生きていく」としか考えてないから、全然違うテイストの人に投げかけようと思ってないし、全然違うテイストの美容師さんと勝負しようとも思ってない。自分に無理しないっていうか、自分の「好き」を見つけるって大事かな。
薫森:ねえ、50代って結構な終盤だよ。
柳:そんなことないです、まだ。100歳まで生きるかもしれないじゃん。
薫森:でも、動けなくなっちゃうんだよ。
柳:100歳でピンピンしてるかもしれないですよ。
薫森:してたらいいけど…。でも、お金がいるじゃん。
柳:いや、大丈夫、大丈夫(笑)。
薫森:さっき柳さんは、感覚ですごいことを決めるって言ってたけど、俺はそこをめっちゃ考えるのね。リスクも考えたうえで、やっていいかどうかを決める。俺は今50歳になって、「100歳まで生きるかもしれない」とか、そういう「かも」ってない。
柳:あ、今、70歳で死ぬことを想定して生きてる、っていうことですね。
薫森:そう。何パターンか想定して、一応「じゃあ100歳だったら……」とかも、考える。でも、いずれにせよ働ける時間は決められてるわけだから、「これをやっておかないと間に合わない」っていうのはある。全然、丁寧な暮らしじゃないよ。バタバタ(笑)。
柳:自分の人生で、あと何をやってないかなって考えたら、私はずっと組織にいたので、「独立する」っていうことなんですよね。だって、私たち前から「そういうの苦手だよね」って言ってたじゃないですか。本当にできないことを、この半年間ずっとやってる。今までやったことがないことを、頭に詰め込んでいる状態なんですけど。

内田:でも、Srawもね、ある種、社内独立というか、自分のブランドだったわけじゃん。だから、仮想独立みたいなことは、一応してるわけだよね?
柳:でも、やっぱり会社がいろいろやってくれていた部分があるんで…。本当に、美容師以外がポンコツで(笑)。本当に、いろいろやったことないことばっかりですよ。
薫森:すごいよね、うっちー。尊敬しちゃう。俺より年下なのに。
内田;聞いていて思ったんですけど、やりたいことがはっきりするまでは、東京を出たりとか、個人でやったりっていうのは、やらないほうがよさそうですね。
薫森:そうだね、上手くいく可能性は低い。決まったら、逆に出たほうがいい。
柳:あったほうが、独立しても楽しいですよね。
(この後は、リスナーからの質問コーナーへ。「東京でやっていた頃と比べて、お金や時間の感覚は変わりましたか?」などの質問から、気づけばなぜか店販の話へ…?詳しくはPodcastで!)
内田:では、時間も結構経ったので、最後の締めをお願いします!
東京にいても、地方に行っても、結局は自分次第

薫森:考えてきたよ。美容師たるもの、技術は絶対に妥協してはいけません。その上で、ブレない自分の武器を持って、それで自由に羽ばたいてほしい。そういうこと。それがすべて!
柳:美容師って、みんな使命とか目的って全然違うんですよね。正解がいくつもある仕事だと思うんです。ただ、私、何回も言っていると思うんですけど、自分の「好き」を追求するっていうことが、本当に大事だと思う。
発信する立場である以上、「私はこれが好きです」「僕はこれが好きです」っていうのは、絶対にあるべきだと思うし、そのためには、自分がいろんなことを知ることも必要。自分の「好き」を知るとか、「自分の好きってなんなんだろう?」って突き詰めることも大事だと思うんですよね。その「好き」が自分の中で明確になったら、そこから広げていけばいい。
薫森さんは「羽ばたいて」って言ったと思うんですけど、私は「この中で広げる」。だから、意味としては少し違うんですけど、自分の好きな世界の中で羽ばたくっていうのが、私の考え方です。自分の「好き」と共通している人だったり、感覚がマッチしている人がどんどん集まってくるから、小さい宇宙みたいになってくるんですよ、お客さんと。「え、それ知ってるんだ」とか、「その人とつながってるんだ」とか、どんどんつながっていきますよね。やっぱり、自分の軸というか、「好き」をちゃんと持って、その中で生きていけばいい。世の中の不特定多数に発信しなくてもいいと思うし、いろんな人をターゲットにしなくてもいいと思う。自分の好きな世界で生きるのが、一番いいのかなと思います。
内田:説得力ありますね。結論、東京でも地方でも、自分次第ってことですね。ありがとうございます!
プロフィール

左から:柳さん、内田さん、薫森さん
薫森 正義(しげもり まさよし)
SHI/GE代表
滋賀県出身。大阪ベルェベル美容専門学校卒業後、上京。都内数店舗でサロンワークを中心に雑誌撮影やセミナー活動を展開。27年間の東京生活を終え、実家から程近い京都に拠点を移す。2024年4月、京都にプライベートサロン『SHI/GE』をオープン。レザーカットを得意とし、圧倒的なセンスの高さと技術力で長年通い続ける顧客を抱える。
Instagram:@magemori
柳 亜矢子(やなぎあやこ)
TWO代表
神奈川県出身。国際文化理容美容専門学校渋谷校卒業後、スタイリストとして経験を積みながらヘアメイクの技術を養う。broocHの立ち上げに参画。2021年、代官山にSrawをオープン。2026年6月に独立し、鎌倉にTWOをオープン。サロンワークだけではなく、ファッション誌などのヘアメイク、業界誌の撮影などでも存在感を発揮。
Instagram:@ayakoyanagi
内田聡一郎(うちだそういちろう)
LECO代表/soucutsの庭ホスト
2003年より原宿のサロンでトップディレクターとしてサロンワークをはじめ、一般誌、業界誌、セミナー、ヘアショー、著名人のヘアメイク、商品開発など様々な分野で活躍。2018年 渋谷にLECOをオープン、2020年 セカンドブランドQUQUを、2025年には別ブランドとしてØØnをオープン。現在渋谷1丁目に5店舗を展開。代表として今後一層の活躍が期待されている。著書「自分の見つけ方」(2013年)、「内田流+αカット」(2017年)、「内田本」(2018年)を発売。また、シザーやシザーケースなどのオリジナルプロダクトも発売中。
Instagram:@soucut
(文/富樫聡美 撮影/菊池麻美)