何者でもなかった僕たちは、クリエイションを通じて成長ができた nenenイッシキケンタ×THE STRAMA春宮雅之の「上手くて、かわいくて、響く表現の定義」−soucutsの庭Vol.7−

イッシキさんと春宮さんの髪のつくり方

 

 

イッシキ:自信があるときもありますし、上手い人を見ると全然ダメだなって思うときもあります。

 

内田:へぇ。でも30歳くらいって、一番尖っている時期じゃない?俺もその頃は、「俺が一番上手い」くらいに思っていたし(笑)。そういう時期ってなかった?

 

イッシキ:スタッフには「俺、上手いから」って言うことはあります(笑)。もちろん、そういう気持ちはあるんですけど、一方で「まだまだだ」と思い続けなきゃいけない、みたいな感覚もあるんですよね。だから、「全然ダメだな」と思うこともあれば、「いや、俺、結構上手くない?」と思うこともある。両方あります。

 

内田:本音で、「ちょっと負ける気しないな」みたいな時期ってあった?

 

イッシキ:それでいうと、僕は“負ける気しない”は、ぶっちゃけないですね(笑)。

 

内田:じゃあ、自信を持ってやれるようになったのはいつ頃?

 

イッシキ:リアルなことを言うと……年明けくらいです。

 

(一同爆笑)

 

内田:めっちゃ最近じゃん!(笑)何があったの?

 

イッシキ:去年までは、基本的に自信はなかったです。それに、DAで春宮くんに負けたことが相当悔しかったんですよ。それで、今年は「髪をつくる」ということをテーマにしていて。それをきっかけに、改めてヘアに向き合うようになったんです。サロンワーク用Instagramアカウントも新しくつくりました。自信がついたというよりは、自分の成長スピードを実感できた感覚に近いですね。これまでは、店の経営もあるし、「一年でこれくらい成長できればいいかな」という感覚だったんです。でも正直、nenenをオープンしてからの3年間よりも、この半年のほうが上手くなった実感があります。

 

内田:それは何か特別なことをしたんですか?

 

イッシキ:特別なことというより、単純に髪に向き合う時間が増えた感じですね。ウィッグを触ったり、より意識的に髪を見たり。以前、このPodcastで山下さんが「研究」という言葉を使っていたじゃないですか。もともと僕は研究するタイプではあったんですけど、それをさらに突き詰めるようになった。これまでは他の美容師さんのInstagramもあまり見ないようにしていたんですけど、最近は意識的に見るようになって。髪の動かし方だったり、ちょっとしたカットの設計だったり。そういうことを、以前より細かく考えるようになりました。

 

内田:二人には共通点があると思っていて。髪のつくり方なんですよ。なんかね、“止め”と“ハネ”が上手い。決める毛と崩す毛、そのバランス感が大枠で言うと二人は似てるっていうか。ただ、最近は春宮くんも少し変わってきたなと思うけど。前回出演してもらった細井くんや白神くんともまた違うんですよ。あの二人はどちらかというと“崩し”が上手いタイプ。一方で二人は、決める毛と止める毛がロジカルに計算されて配置されている感じがする。だから、「おしゃれだな」より先に、「上手いな」と思うんですよね。もちろんおしゃれなんだけど、それ以上に技術的な精度を感じる。だから前回と今回で、あえて回を分けたんです。そういう感覚って、自分たちでもある?

 

春宮:確かにありますね。特にイッシキさんの作品を見ていると感じます。先輩なんですけど、ライバルでもあるというか。イッシキさんの作品が上がってくると、やっぱり燃えるものがあるんですよ。「ヘアのバランス上手いな」とか、「この束感のつくり方上手いな」とか。共感できるし、同時に悔しくもなる。僕にとってはそういう存在ですね。一方で、細井さんや白神さんの作品を見ると、また全然違う感覚なんです。いい意味で“触っていない”というか。僕だったらここにポイントをつくりたくなるな、というところを、あの二人はパパパパッと終わらせる感じなんですよ。

 

内田:わかる。それ、僕も前回話していて。細井くんと白神くんって、技術的な話でいうと、テールコームを絶対に使わないっていう信条があるらしいんですよ。俺は使うんだけど(笑)。二人は使う?

 

 

イッシキ:僕は使わないですね。ただ、丁寧にはつくります。

 

春宮:僕も使わないです。

 

内田:へぇ! そうなんだ!でも、その割にはすごく計算された場所に毛束が配置されている印象があるんだよね。

 

イッシキ春宮:手ですね。

 

内田:それは意外だったな(笑)。絶対テールコームを使っていると思ってた。俺だけだった(笑)。俺もやめようかな(笑)。

 

イッシキ:でも、毛の動かし方に関しては、内田さんの影響が大きいですよ。

 

内田:本当?全然違うと思うけど(笑)。

 

イッシキ:面で見せるスタイルというより、動かして見せるスタイルのバランス感がすごいじゃないですか。毛束のつくり方とか、繊細な動かし方とか。そういう部分は、自分が目指しているところでもあります。

 

内田:なんか、俺がいて、二人がいて、細井くんや白神くんがいる、みたいなグラデーションがある気がする(笑)。俺が一番硬いな……悔しいけど(笑)。でも春宮くんのスタイルも、最近は変わってきたけど、昔は結構“硬い”印象だったんだよね。もちろん、それが好きで意図的にやっているんだろうなと思っていたけど。例えばパーマスタイルでも、フェイスラインの開け方とか毛流れの行き先とか。「ここをこうしたら、次はこうなるよね」みたいな計算が見えるというか。そういう感覚はあった?

 

春宮:まさに内田さんが言われた通りで。以前は、「ここにこの毛束があるなら、ここはこうしよう」という感じで、かなり計算しながらつくっていました。でも、そうやって作っていくと、自分の中で作品がどんどん重くなっていく感覚があったんです。毛束の動き自体は好きなんですけど、全体がまとまりすぎて重い気がして。それと僕は、クリエイションがサロンワークにつながってほしいと思っているんです。雑誌やSNSで作品を見た人が、「この人に髪を切ってもらいたい」と思ってくれることが理想なので。そう考えたときに、自分の作品をSNSで見返して、「ちょっと重いな」と感じたんですよ。これだと、お客さまに届きづらいかもしれないなって。その頃から、細井さんや白神さんのような、リアルなサロンワークの中で洒落感を出している人たちのスタイルを見るようになりました。もちろん計算はされているんだけど、そう見えない。柔らかくて、自然に見える。

そういう動きを、自分もクリエイションの中に取り入れたいと思ったんです。そこから少しずつ変えていきました。

 

内田:最近は結構崩しているもんね。去年と今とでは、全然違うと思う。

 

春宮:そう思います。

 

内田:今の話を聞いていると、意外とSNSは集客も意識しているんだね。イッシキの場合、新しく作ったアカウントは別として、もともとのアカウントはどちらかというと作品性重視というか、お客さまというより業界に向けて発信している印象があったんですよ。でも春宮くんは、どちらかというと集客につなげる感覚のほうが強いの?

 

 

春宮:集客……というよりは、プロフィール帳みたいな感覚かもしれないです。自分がどういう人間なのかを、自分以外の人に伝えるためのものというか。お客さまもそうですし、美容師も含めて、全員に向けて発信している感覚ですね。

 

内田:なるほど。でも、その中で「お客さまが来たくなるきっかけになるか」ということは、以前より意識するようになった?

 

春宮:そうですね。気にしていないつもりでも、自分の作品をSNSに上げたときに、やっぱり「いいね」が付いたほうがうれしいし、保存されたほうがうれしい。たぶん自分の世代的な感覚もあると思うんですけど。そういうことを考えるようになってから、少しずつ変わっていった気がします。

 

内田:今のほうが反応はいいの?

 

春宮:全然いいですね。

 

内田:つまり、崩して、硬すぎない表現にしたほうがシンプルに届いたと。

 

春宮:そうですね。ただ、去年JHAにノミネートしていただいて会場に行ったんですけど。そこで、つくり切るかっこよさみたいなものも感じたんですよ。だから、それもやっぱりかっこいいなって思うんです。

 

内田:今は、その間で揺れている感じなんだね。これまでは、いわゆる業界的なクリエイションにはあまり興味がなかったの?

 

春宮:興味がなかったわけではないんですけど、やっぱり特別な世界だなとは思っていましたね。

 

内田:自分とはあまり縁がなさそうな場所、というか。それがたまたま入れた、みたいな感覚?

 

春宮:うーん、入れたらいいな、くらいですね。すごく強く意識していたわけではなかったです。

 

内田:このあたり(内田さん&イッシキさんと春宮さんの間)に結構境界線がありそうだよね。イッシキくんは、どちらかというと業界誌だったり、作品を世に打ち出したい気持ちは強いでしょ?

 

イッシキ:それは強いですね。

 

内田:やっぱりそうだよね。たぶん、その感覚ってこの世代くらいまでな気がする。そこが一つの分岐点なのかもしれない。作品にも表れている気がするな。

 

イッシキ:動機はシンプルで、普通に「いいね」って言われたいだけで(笑)。僕は作品と集客は、あまり直結しないと思っているタイプなんです。美容師でもいろんな側面があるじゃないですか。例えば僕は経営者でもあるし、家に帰れば父親でもある。いろんな自分の一面がある中で、ただ純粋に表現したものが誰かに伝わったり、「いいね」と思ってもらえたりすることが、シンプルに嬉しくて、楽しいんです。もちろん髪があってこその作品なんですけど、それ以上に「思い通りのものをつくって、評価してもらえること」が好きなのかもしれないですね。例えば、めちゃくちゃ料理が上手くて、その料理の写真を上げて「すごいね」って言われたら嬉しいじゃないですか。僕にとっては、それと同じ感覚かもしれません。

 

 

内田:純粋に創作が好きなんだろうね。イッシキに関してはもちろんだけど、nenenもとんでもないペースで創作してるじゃないですか。また撮影してるな、みたいな(笑)。あれ、どれくらいの頻度でやってるの?

 

イッシキ:お店として大きく取り組むのは半年に一回くらいですね。ただ、フォトコンもありますし、それも含めると二か月に一回くらいはしっかり作品をつくっています。アシスタントは毎月撮影会がありますし。

 

内田:それってサロンワーク寄りじゃなくて、結構つくり込む感じ?

 

イッシキ:フォトコンは年4回あって、そこは完全に自由です。サロンワーク寄りでもいいし、クリエイションでもいい。何でもありですね。毎月の撮影会も、去年まではなんでもありで、世界観や表現したいことをどう形にするか、という部分を見ていました。準備が甘いとか、それは現実的じゃないとか、この組み合わせは面白いけど、少しチープに見えるんじゃないかとか。そういう具体的なアドバイスをしていたんです。でも最近、自分の中で「髪をつくる」というテーマが強くなったので。完全に僕のワンマンなんですけど(笑)、撮影会の内容も変えました。今はみんなでヘアを上手くなろうぜ、という会になっています。

 

内田:ルックはシンプルにして、とにかくヘアにこだわると。

 

イッシキ:そうですね。スタイリングだけでどれだけかわいい髪をつくれるか。そこを僕と下岡(nenenスタイリスト)で見ています。

 

>28歳が分岐点

 

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング