「普通って誰が決めるの?」 クリエイションで唯一無二を貫く、QUQU浦さやか×niko hair氏川りの の頭の中−soucutsの庭Vol.8−

美容以外の趣味が、転機になった

 

 

内田:浦さんを掘り下げていると終わらないので(笑)。そんなお二人に共通しているのが、趣味をすごく大事にしていること。りのちゃんは今、バンド活動をしているし、浦さんは琵琶や和装、日本髪も習っていますよね。それも趣味の延長なんですか?

 

:そうだね。今は和のものがすごく好きだから。

 

内田:お二人とも仕事以外に夢中になっていることがありますけど、それってクリエイションにも影響していますか?

 

氏川:作品そのものに影響しているかというと、そこまでではないかもしれません。でも、私自身の生き方は大きく変わりました。10年以上、クリエイションと美容だけに全力で向き合ってきて、衣装もメイクもヘアも全部自分でやっていました。友達もほとんどいなかったし、遊ぶこともなくて。ある時、「美容がなくなったら、私には何もないな」って気づいたんです。周りの人のことも全然大切にできていなかったなって。

転機になったのは、ルベルのIDでグランプリをいただいた時でした。周りの方はそんなことないと言ってくれたんですけど、自分の名前が呼ばれた瞬間、会場がシーンとしたように感じてしまって。

 

内田:常勝・氏川りの、みたいな空気があったんだ。冷めちゃった雰囲気みたいな。

 

 

氏川:そうです。応援に来てくれる人もいなかったし、自分はそういう人間関係を築いてこなかったんだって、そこで気づきました。だから、「もっと人に喜ばれる人になろう」「自分が身につけた力を、人のために使おう」と思うようになったんです。そこから美容業界以外の人とも会うようになって、ご飯にも行くようになって。人とのつながりを大切にするようになりました。その中で出会ったのが、今一緒にバンドをやっている服飾関係の方とニット作家さんで。実は昔から、「人生で一度はバンドを組みたい」という夢があったんです。二人にその話をしたら、「この三人ならできそうだね」って。ギターもベースも初心者だったんですけどね。始めて1年ほどで100人以上の新しい人と出会いました。新しいことに挑戦して、いろんな人に出会って、そのつながりを大切にしたいという思いでバンドを始めたので、それはすごくよかったなと。

だから、作品への影響というより、自分の生き方を変えてくれた出来事だったと思っています。

 

内田:なるほどねえ。これ、浦さやかには全くない話じゃないですか?(笑)

 

:(笑)。人間関係をねえ…。広げようとはしてないもんねえ。

 

氏川:私もこういう風になるとは思ってなかったです。大人数の中にいるのも、知らない人に会うのも苦手だし、ずっと避けてきたので。でも、浦さんは、存在として愛されてるじゃないですか。

 

作品作りは誰かのためか、自分のためか

 

内田:浦さん、誰かのために何かを作るとかないでしょ?

 

:最低かもしれないけど……ない(笑)。正直に言うと、本当に自分のためにしか作ってない。人のために作る余裕はあんまりないのかも。もちろん、サロンの教育は別。スタッフには、自分が持っている技術は全部惜しみなく伝えたいと思ってる。でも、作品に関してだけは、すごく閉鎖的になる。だから、みんなを巻き込んで作品を作るって、本当に素晴らしいと思うし、自分もやりたいなと思う時はあるよ。実際、うちのサロンもそこがいいところだし。でも、作品だけは、まだどこか独り占めしたい気持ちがあるかな。そこは、自分でも子どもっぽいかなって思う。

 

内田:スタート地点は違うけど、二人とも作品のクオリティがすごく高い。誰かのために作っていても、自分のために作っていても、結局、人の心に響くものになっている。一方で最近は、「好きなものを作ること」と「クオリティが高いこと」は別だよね、という話もよくあります。独創的ではあるけど、技術的にはもう一歩、という作品も少なくない。その点、お二人の作品は、攻めているようでいて、ちゃんとバランスが取れている。さっき話していた「ルールの中で遊ぶ」という感覚にも通じるけれど、その絶妙なさじ加減があるんですよね。

 

:私は、そこは結構意識しているかもしれない。というか、根本はすごくベーシック。最初からぐにゃぐにゃに崩しては始めてないかな。服もそうで、ベーシックなものが一番好き。デザインが強い服は、あまり得意じゃない。

 

内田:それ、よく言ってるよね。

 

:くしゅくしゅしてたりとか、何かがあしらってあったりする服とか。

 

内田:いかにも「おしゃれでっせー!」っていう感じの服が、一番嫌いなんだよね。

 

:デザイナーの意思が強すぎるものを着たくないから。……私、相当アレだよね…(笑)。

 

内田:捻くれ者ってこと?(笑)

 

:捻くれてるというか、人のセンスをそのまま纏うのが苦手なんだと思う。だから、自分のことが大好きなんだろうね(笑)。着物って、基本の形はみんな同じじゃないですか。

制服もそう。だから、セーラー服もずっと好きだったし、着物も好き。形は完成されていて、着方だけが自分の自由、というのが心地いいな。

 

内田:浦さんって、高いデザイナーズブランドの服を買って、翌日に全部解体したりするんですよ(笑)。「デザイナーへの冒涜だろ!」って、よく言うんですけど(笑)。

 

:それは言い過ぎ(笑)。誤解があるんだけど、私、肩幅がすごく狭くて、普通の服が体に合わないのね。身長はあるのに肩だけ合わない。首も長く長くて撫で肩だから、普通のサイズだとほとんど着れなくて、縫い直すの。ダウンコートでも何でも。

でも、最初からそうするつもりで買っているので(笑)。デザインが好きだから、そうまでしても買いたいからってことなので、冒涜じゃなくて、リスペクト(笑)。

 

氏川:裾直しならぬ、肩直しみたいな。

 

:そうそう。

 

 

(この後、「2人の発想はどんな時に出るの?」「人生を楽しむコツは?」などなど、リスナーからの質問に2人が答えます。氏川さんとサロンを越えた師弟関係にある維駒さんや、長年浦さんと苦楽を共にしてきた楽人さんも飛び入り参加して、会場は大盛り上がり!詳しくはPodcastをチェック!)

 

自分と向き合うこと。クリエイションの答えは一つ

 

 

内田:最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。美容師さんがほとんどですし、クリエイションに興味がある方も多いと思います。

 

氏川:この対談を聞いてくださる方は、「個性」や「自分らしさ」の見つけ方を知りたいと思っている人が多い気がします。でも、これはどのセミナーでもお話ししていることなんですが、答えは外にはありません。自分らしさも、自分がやる意味も、答えはいつも自分の中にある。だから、ぜひもう一度、自分自身と向き合って、その答えを見つけてもらえたらうれしいです。

 

:私はメッセージというより、クリエイションをする時にいつも思っていることを。私は、答えは一つしかないと思って作っています。その一つが見つかるまで終わらない。

見つからないなら、途中でやめちゃダメ。そんな気持ちで向き合うと、結構面白いですよ。

 

氏川:やっぱり、浦さんのそういうところ、好きだなって思いました(笑)。

 

:うそっ(笑)。

 

内田:今後のお二人の作品も楽しみにしています。本日はありがとうございました!

 

左から:氏川さん、内田さん、浦さん

 

浦さやか(うら さやか)

長崎県美容専門学校卒業。ずば抜けたセンスと独自の感性で、他にはない新しいデザインを発信し続けている。サロンワークを中心として一般誌や業界誌の撮影、さらには全国各地での講習活動や商品開発にも携わるなど、幅広い分野で活躍。2020年4月内田聡一郎氏と『QUQU』をオープン。

Instagram:@ququ_ura

 

氏川 りの(うじかわ りの)

niko hair アートディレクター

1985年生まれ。高知県出身。高知理容美容専門学校卒業後、県内1店舗を経て2009年にLABOON(現niko hair)に入社。エモーショナルで高純度なヘアデザインで、JHA、DA、三都杯など受賞歴多数。

Instagram:@ujikawa_rino

 

内田聡一郎(うちだそういちろう)

LECO代表

soucutsの庭ホスト

2003年より原宿のサロンでトップディレクターとしてサロンワークをはじめ、一般誌、業界誌、セミナー、ヘアショー、著名人のヘアメイク、商品開発など様々な分野で活躍。2018年 渋谷にLECOをオープン、2020年 セカンドブランドQUQUを、2025年には別ブランドとしてØØnをオープン。

現在渋谷1丁目に5店舗を展開。

代表として今後一層の活躍が期待されている。著書「自分の見つけ方」(2013年)、「内田流+αカット」(2017年)、「内田本」(2018年)を発売。また、シザーやシザーケースなどのオリジナルプロダクトも発売中。

Instagram:@soucut

 

 

 

(文/富樫聡美  撮影/菊池麻美)

 

 

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